増量期のカロリーは+10〜20%で足りる|脂肪をつけずに増やす3ステップ計算

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「増量期に入ったのに体重が動かない」「食べているのにお腹まわりだけ育った」——増量期のカロリー設定は、この2つの失敗のどちらかに寄りがちです。原因はほとんどの場合、上乗せする量が多すぎるか、そもそも基準になる維持カロリーを把握していないかのどちらかです。

結論から言うと、増量期のカロリーは維持カロリー+10〜20%が出発点です。オフシーズンのボディビルダー向け栄養レビュー(Iraki 2019)が示す幅で、体重の増え方は1週間あたり体重の0.25〜0.5%に収まるのが目安になります。体重70kgなら週175〜350g、1カ月で約0.7〜1.5kgというペースです。数字にすると、想像よりずっと控えめだと感じるはずです。

この記事では、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推定エネルギー必要量を使って自分の維持カロリーを出す手順から、PFCの埋め方、毎週の微調整、食べきれないときの対処、そして増量期の終わらせ方までを順番に整理します。電卓ひとつで今日の食事から動かせるところまで落とし込みます。

💪 この記事でわかること

・増量期のカロリーを「維持+10〜20%」で決める理由と根拠
・食事摂取基準(2025年版)から自分の維持カロリーを出す3ステップ
・たんぱく質・脂質・炭水化物を埋める順番と体重70kgの配分例
・体重の増え方を見て毎週100〜200kcal刻みで調整する手順
・脂肪ばかり増える人の共通点と、増量期の終わらせ方

目次

増量期のカロリーは維持+10〜20%から始める

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増量期のカロリー設定でいちばん多い勘違いは、「オーバーカロリーにすればするほど筋肉が増える」という考え方です。筋肉の合成には上限があり、余ったエネルギーは行き場を失って体脂肪に回ります。だからこそ、上乗せ幅には現実的な目安が必要になります。

📖 用語チェック

維持カロリー=体重が増えも減りもしない1日の摂取エネルギー量。オーバーカロリー=維持カロリーより多く摂っている状態。増量期はこのオーバーカロリーを意図的に、しかも小さく作る期間です。

上乗せは+10〜20%、それ以上は脂肪の取り分になる

増量期のカロリーは、維持カロリーの10〜20%増しに設定するところから始めます。これはオフシーズンのボディビルダー向け栄養ガイドラインをまとめたSports誌のナラティブレビュー(Iraki 2019)が示している幅で、同レビューは初心者・中級者の体重増加ペースを1週間あたり体重の0.25〜0.5%、上級者はさらに保守的に約0.25%としています。

なぜ幅があるのかというと、トレーニング歴によって筋肉が増えるスピードが違うからです。始めたばかりの人は同じカロリーでも筋肉の取り分が大きく、年数を重ねた人ほど余剰分が脂肪に流れやすくなります。トレーニング歴1年未満なら+20%寄り、3年以上なら+10%寄りと考えると外しにくいでしょう。

注意したいのは、この10〜20%が「維持カロリーを正しく把握できている」前提の数字だという点です。維持カロリーの見積もりが200kcalずれていれば、+10%の上乗せは丸ごと吹き飛びます。まず基準を作る、上乗せはその後。順番を逆にすると、どれだけ緻密に計算しても体重は思った方向に動きません。

体重70kgなら週175〜350g、1カ月で約0.7〜1.5kg

「+10〜20%」を体感できる数字に置き換えると、増量期の見え方が変わります。体重70kgの人が週0.25〜0.5%で増えるなら、1週間で175〜350g、1カ月で約0.7〜1.5kgです。半年続けても数kg程度で、SNSで見かける短期集中の増量談とは明らかにペースが違います。

この遅さには理由があります。増えた体重の中身は筋肉・グリコーゲンと水分・体脂肪の混合で、筋肉の合成速度は意志の力では加速しません。ペースを2倍に上げても筋肉の取り分が2倍になるわけではなく、増えるのは主に脂肪側です。体脂肪1kgは約7,200kcalに相当するとされ、余剰を積み上げるほど後の減量期が長くなります。

使い分けとしては、体脂肪率に余裕がある人やこれから夏に向かう人はペースの下限側、明らかに痩せ型で体重が増えないことが悩みの人は上限側を選びます。ただし体重計の数字は水分やグリコーゲンでも動くため、1週間単位の変動をそのまま「筋肉が増えた」と読むのは早計です。判断は次に説明する週平均で行います。

初日から上限いっぱいに上げると、最初の2週間で判断材料を失う

よくある失敗が、増量期の初日からいきなり+20%に振り切るパターンです。体重は最初の1週間で1kg以上跳ね上がりますが、その大半は食事量が増えたことによるグリコーゲンと水分の増加で、筋肉の増加とは切り分けられません。結果として「効いているのか効きすぎているのか」が判断できないまま2週間が過ぎます。

対策はシンプルで、+10%から始めて、2週間の体重推移を見てから足すことです。2週間で週0.25%に届いていなければ100〜200kcalずつ増やし、届いていれば据え置きます。この「小さく始めて足す」順番なら、上乗せの効果が体重の動きとして読み取れます。

逆に、最初から上限で始めて体重が増えすぎた場合、カロリーを削るしかありません。増量期に減らす作業はモチベーションを削りますし、削りすぎると今度は停滞します。増量期のカロリーは、下から寄せていくほうが結果的に速いのです。

維持カロリーを3ステップで割り出す

上乗せの前に必要なのが、基準となる維持カロリーです。ここは推測ではなく、厚生労働省が5年ごとに改定している公的な基準値を使うと精度が上がります。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は令和7年度(2025年4月)から5年間使われる最新版です。

ステップ1:基礎代謝量を体重から出す

最初に出すのが基礎代謝量です。食事摂取基準(2025年版)は年齢・性別ごとに「体重1kg当たりの基礎代謝量基準値」を示していて、18〜29歳男性は23.7kcal/kg体重/日、30〜49歳男性は22.5kcal/kg体重/日、50〜64歳男性は21.8kcal/kg体重/日です。女性は18〜29歳が22.1kcal/kg体重/日、30〜49歳が21.9kcal/kg体重/日となっています。これに自分の体重をかければ基礎代謝量が出ます。

基準値が年齢とともに下がるのは、加齢に伴って除脂肪量が減るためです。e-ヘルスネットの「加齢とエネルギー代謝」によると、体重70kgの男性の基礎代謝量は20歳代で1,680kcal、50歳代で1,505kcalと、約175kcalの差が生じます。同じ体重・同じ食事でも、年齢によって増量期のカロリー設定が変わるということです。

注意点として、この基準値は日本人の平均的な体組成をもとにした推定式です。除脂肪量が平均より多い人は実際の基礎代謝量が高く、体脂肪率が高い人は低めに出る傾向があります。あくまで出発点であり、最終的な答え合わせは体重の推移で行う、という前提を忘れないでください。

ステップ2:身体活動レベルを正直に選ぶ

次に決めるのが身体活動レベル(PAL)です。食事摂取基準(2025年版)は18〜64歳について、低い1.50・ふつう1.75・高い2.00の3カテゴリーを示しています。基礎代謝量にこの数字をかけたものが、1日の推定エネルギー必要量です。

ここで多くの人がやりがちなのが、自己申告の水増しです。基準では「低い」は生活の大部分が座位で静的な活動が中心の場合、「ふつう」は座位中心の仕事だが職場内での移動や立位での作業・接客、通勤・買い物での歩行、家事、軽いスポーツのいずれかを含む場合、「高い」は移動や立位の多い仕事、あるいはスポーツ等余暇における活発な運動習慣を持っている場合と定義されています。目安として、仕事での1日当たりの合計歩行時間は「低い」0.25時間、「ふつう」0.54時間、「高い」1.00時間とされています。

週3回のジム通いは、それだけでは「高い」の根拠になりません。デスクワーク中心で通勤に多少歩く人は、ジムに行っていても「ふつう」に収まるケースが大半です。1.75を2.00に読み替えると、体重70kgの人で数百kcalの誤差になります。増量期のカロリーが最初からずれる原因は、ほとんどここです。

ステップ3:早見表で答え合わせをする

計算が合っているかは、食事摂取基準(2025年版)の参考表「推定エネルギー必要量」と照らすと確認できます。以下は同表の値(身体活動レベル「ふつう」)と、そこに+10〜20%を乗せた増量期のカロリー目安を並べたものです(筋トレの教科書調べ/出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書)。

📊 維持カロリーと増量期カロリーの早見表
年齢・性別 維持(活動レベルふつう) 増量期の目安(+10〜20%)
18〜29歳・男性 2,600kcal 2,860〜3,120kcal
30〜49歳・男性 2,750kcal 3,025〜3,300kcal
50〜64歳・男性 2,650kcal 2,915〜3,180kcal
18〜29歳・女性 1,950kcal 2,145〜2,340kcal
30〜49歳・女性 2,050kcal 2,255〜2,460kcal

この表の維持カロリーは参照体重(30〜49歳男性なら70.0kg、18〜29歳女性なら51.0kg)に対応する値です。自分の体重が参照体重から離れているほど、表とのズレは大きくなります。体重が参照体重より重い人は表より多め、軽い人は少なめが出発点になると考えてください。

身体活動レベルが「低い」寄りの人は、30〜49歳男性で2,350kcal、「高い」なら3,150kcalと、同じ年齢でも800kcalの開きがあります。増量期のカロリーを決めるうえで、体重よりも活動量のほうが効いてくる場面は珍しくありません。

⚠️ 計算前にチェック

食事摂取基準は「活用に当たっては、食事評価、体重及びBMIの把握を行い、エネルギーの過不足は体重の変化又はBMIを用いて評価すること」と明記しています。計算値は仮の答えで、正解は体重計が教えてくれます。目標とするBMIの範囲は18〜49歳で18.5〜24.9、50〜64歳で20.0〜24.9です。

PFCは「たんぱく質→脂質→炭水化物」の順で埋める

PFCは「たんぱく質→脂質→炭水化物」の順で埋めるの解説画像

カロリーが決まっても、その中身の配分を決めないと増量期は機能しません。PFC(たんぱく質・脂質・炭水化物)は同時に決めるのではなく、埋める順番があります。先に決めるべきものから順に固定していくと、迷いが減ります。

たんぱく質は体重×1.6〜2.2gを先に確保する

最初に固定するのがたんぱく質です。Iraki 2019は1日あたり体重1kgあたり1.6〜2.2gを推奨しています。体重70kgなら112〜154gが範囲で、真ん中を取って2.0g/kgなら140gという計算です。

この幅の下限側に根拠を与えているのが、複数研究をまとめたメタアナリシスです。たんぱく質摂取量と筋肉増加の関係を解析した研究では、1日あたり体重1kgあたり1.62gを超えて摂っても筋肉量の増加は頭打ちになるとされています。一方で増量期やハードなトレーニング期には上限の2.2g/kg側を選ぶ考え方があり、レビューが幅を持たせているのはこのためです。

ちなみに、食事摂取基準(2025年版)のたんぱく質推奨量は18〜49歳男性で65g/日、女性で50g/日です。これは健康維持のための基準で、筋肥大を狙う人の目安とは別物と考えてください。摂りすぎのデメリットとしては、たんぱく質でカロリーを埋めるほど食費と満腹感が増し、後述する炭水化物の枠を圧迫する点が挙げられます。

脂質は削りすぎない。体重×0.5〜1.5gが目安

次に決めるのが脂質です。Iraki 2019は1日あたり体重1kgあたり0.5〜1.5gを挙げています。体重70kgなら35〜105gが範囲で、1.0g/kgなら70gです。

増量期に脂質を極端に削る人がいますが、これは避けたいところです。脂質は1gあたり9kcalとエネルギー密度が高く、食べる量を増やせない人にとってはカロリーを稼ぐ現実的な手段になります。食事摂取基準(2025年版)でも脂質の目標量は18〜49歳で20〜30%エネルギー、飽和脂肪酸は7%エネルギー以下と示されており、下限を下回る設計は基準からも外れます。

使い分けとしては、食が細い人は1.0〜1.5g/kg側で総量を稼ぎ、トレーニング強度が高くて炭水化物を厚くしたい人は0.5〜0.8g/kg側に寄せます。注意点は、脂質は体感が薄いまま数字が積み上がることです。ドレッシング・炒め油・ナッツは記録から漏れやすく、気づかないうちに+20%の枠を食い潰します。

残りを全部炭水化物に回す(体重×3〜5g以上)

たんぱく質と脂質を決めたら、残ったカロリーは炭水化物です。Iraki 2019は1日あたり体重1kgあたり3〜5g以上を目安としており、体重70kgなら210〜350gが最低ラインになります。実際には残りカロリー次第でこれを大きく上回ります。

炭水化物を厚く取る理由は、トレーニングの出力に直結するからです。増量期の目的は「食べること」ではなく「前より重い重量を扱えるようになること」で、そこに使われるのが筋グリコーゲンです。たんぱく質と脂質でカロリーを埋めきってしまうと、食べているのに練習で伸びないという状態になります。

体重70kgで3,000kcalを組む場合の配分例が以下です。たんぱく質140g(560kcal・約19%エネルギー)、脂質70g(630kcal・21%エネルギー)、炭水化物452g(1,810kcal・約60%エネルギー)。食事摂取基準(2025年版)が示す目標量(たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%エネルギー)の範囲にきれいに収まります。

📊 体重70kg・3,000kcalのPFC配分例
栄養素 g/kgの目安 1日の量 エネルギー比
たんぱく質 1.6〜2.2g 140g(560kcal) 約19%
脂質 0.5〜1.5g 70g(630kcal) 21%
炭水化物 3〜5g以上 452g(1,810kcal) 約60%

1食あたりのたんぱく質は体重×0.40〜0.55g

1日の総量が同じでも、配り方で使われ方は変わります。Iraki 2019は1食あたり体重1kgあたり0.40〜0.55gを1日3〜6回に均等配分し、トレーニングの1〜2時間前と後にそれぞれ1食を置くことを推奨しています。体重70kgなら1食28〜38gで、4食に分ければ1日140gに届く計算です。

この配分が効くのは、増量期のカロリーを消化しやすくなるからでもあります。1日2食で3,000kcalを押し込むのは苦行ですが、4〜5食に割れば1食あたりの負担は半分以下です。食べられない人ほど、まず回数を増やすほうが総量は伸びます。

デメリットは手間です。1日5食の準備を毎日続けるのは現実的でない人も多く、そこで使われるのがプロテインパウダーやおにぎりのような固定メニューです。全食を自炊で組み立てようとして3日で崩壊するより、2食は固定・3食は自由、くらいの設計のほうが続きます。

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体重の増え方を見て毎週カロリーを微調整する

増量期のカロリーは、一度決めたら終わりではありません。体重が増えれば維持カロリーも上がるため、同じ数字を続けているだけで数週間後には「オーバーカロリーではない状態」に戻ります。調整はセットで運用するものだと考えてください。

物差しは週0.25〜0.5%。体重ではなく増加率で見る

判断基準は体重の実数ではなく増加率です。Iraki 2019の初心者・中級者向けの目安は1週間あたり体重の0.25〜0.5%で、体重70kgなら週175〜350gに当たります。この帯に収まっていればカロリーは据え置き、下回るなら増やし、上回るなら戻します。

率で見る理由は、体重によって適正な増加量が変わるからです。同じ週350gでも、体重の軽い人には速すぎ、体重の重い人には遅すぎます。「毎週何グラム」で覚えず、「自分の体重の何%か」で覚えておくと、体重が変わっても物差しが使い回せます。

注意点は、増量期の序盤は率が当てにならないことです。食事量を増やした最初の1〜2週間はグリコーゲンと水分で体重が跳ねるため、この期間の数字で判断するとカロリーを不必要に削る結果になります。判断は3週目以降から始めるのが無難です。

増えないときは100〜200kcalずつ足す

3週間見て週0.25%に届かない場合は、100〜200kcalを追加します。いきなり500kcal足さないのは、足しすぎたときに戻す作業が発生するからです。小さく足して、また2週間見る。この繰り返しで自分の数字に近づきます。

追加分をどの栄養素に振るかは、炭水化物が第一候補です。たんぱく質はすでに1.6〜2.2g/kgで足りており、脂質は増やしすぎると総量の割に満腹感が強くなります。ごはんを1杯分増やす、トレーニング後にバナナを足す、といった単位が扱いやすいでしょう。

逆に週0.5%を超えて増え続けている場合は、同じ刻みで減らします。ここで一気に維持カロリーまで落とすと、今度は完全に停滞して「増量期のカロリーがわからない」状態に逆戻りします。上げるときも下げるときも刻みは同じ、と決めておくと運用が楽です。

⚠️ 体重の測り方で結論が変わる

体重は起床後・排尿後・朝食前の同じ条件で毎日測り、7日間の平均どうしを比べます。単日の比較では、前日の塩分や食事量による変動が増加率を簡単に上書きしてしまいます。

失敗例:毎日の数字に反応してカロリーを週2回変える

増量期でつまずく人に多いのが、体重計の日々の変動に反応して設定を頻繁に動かすパターンです。月曜に300g増えたので200kcal減らし、木曜に200g減ったので300kcal戻す——これを繰り返すと、1週間の平均摂取カロリーが何kcalだったのか自分でもわからなくなります。

原因は、体重の変動幅を「食べた量の結果」だと解釈していることです。実際には、前日の炭水化物量・塩分・排便・水分でも体重は動きます。1日単位の増減は、増量期の判断材料としてはノイズが大きすぎるのです。

対策は、変更は週1回まで、判断は7日平均でのみ行うとルール化することです。毎日の体重は記録するだけにして、比較は「今週の平均」と「先週の平均」だけ。この2つの数字しか見ないと決めるだけで、増量期の運用は安定します。

脂肪ばかり増える人がやっている3つのこと

増量期のカロリーを正しく設定しても、体脂肪の増え方が想定を超えることがあります。その場合、原因はカロリーの数字ではなく運用の側にあることが多いものです。よくある3つを見ていきましょう。

「増量期だから何を食べてもいい」で記録をやめる

いわゆるダーティバルクの落とし穴です。増量期に入った途端に食事記録をやめ、感覚で食べ始めると、上乗せ幅は簡単に+20%を超えます。高脂質の外食が週に何度か入るだけで、増加率は目安の上限を突破します。

厄介なのは、食べ放題や高脂質の食事は満腹感の割にたんぱく質が少ないことです。カロリーだけ超過してたんぱく質は1.6g/kgに届かない、という配分になりやすく、増えた体重の中身が脂肪に偏ります。増量期こそ記録の価値が高いと言えます。

対策は、記録の粒度を落としてでも続けることです。全食を1g単位で計量しなくても、主食の量と主菜のたんぱく質源だけメモしておけば、上振れした日は把握できます。完璧な記録を3日でやめるより、雑な記録を3カ月続けるほうが増量期は成功します。

有酸素運動をゼロにしてしまう

「カロリーを消費したくないから有酸素は一切やらない」という判断も、脂肪の増加を早める方向に働きます。有酸素運動を完全に止めると総エネルギー消費量が下がり、同じ摂取カロリーでも実質的な上乗せ幅が大きくなるためです。

e-ヘルスネットによれば、総エネルギー消費量は基礎代謝量が約60%、食事誘発性熱産生が約10%、身体活動量が約30%で構成され、多い少ないを決めるのは身体活動量です。同ページは、肥満者は歩行なども含めた立位による活動時間が平均で1日約150分少なかったとも紹介しています。日常の活動量は、想像以上に総消費量を左右します。

とはいえ、増量期に長時間の有酸素を入れる必要はありません。e-ヘルスネットの分類では歩行や軽い筋トレが3メッツ、ゆっくりとしたジョギングが6メッツ、ランニングが8メッツです。増量期は3〜4メッツ帯の活動を日常に残す程度で十分で、これが食欲と血糖コントロールの助けにもなります。

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食事量だけ増えて、トレーニング量が増えていない

3つ目が、増量期なのにトレーニングの内容が先月と同じというケースです。オーバーカロリーは筋肉を作る材料を供給するだけで、作れという命令を出すのはトレーニングです。刺激が変わらなければ、余ったエネルギーの行き先は脂肪しかありません。

健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023は成人・高齢者に週2〜3日の筋力トレーニングを推奨しており、筋トレを実施している群は総死亡リスクおよび心血管疾患・全がん、糖尿病・肺がんの発症リスクが10〜17%低いという知見を紹介しています。ここでいう筋力トレーニングにはマシンを使うウエイトトレーニングだけでなく、自重の腕立て伏せなども含まれます。

増量期に見るべきは、体重より先に「先月より重い重量で同じ回数が挙がっているか」です。挙がっていないなら、増えた体重は筋肉の増加を反映していない可能性が高くなります。カロリーを足す前に、まずセット数と重量の記録を見返してください。

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Q 増量期に体脂肪率は何%まで上げていいですか?
A Iraki 2019は増量期の開始・終了時の体脂肪率について具体的な数値を示していません。公的な基準として食事摂取基準(2025年版)が挙げているのは体脂肪率ではなくBMIで、18〜49歳の目標とする範囲は18.5〜24.9です。体脂肪率で管理するより、BMIの上限に近づいてきたら一区切り、と考えるほうが根拠のある判断ができます。

どうしても食べきれない人のカロリーの足し方

増量期のカロリーが決まっても、そもそもその量を食べられないという壁にぶつかる人がいます。とくに痩せ型の人にとって、3,000kcalは意志の問題ではなく物理的な難題です。ここは工夫で越えられます。

液体で足すと、満腹感の割にカロリーが入る

固形物で胃が埋まってしまう人に効くのが、液体でのカロリー確保です。飲み物は胃内滞留時間が短く、同じカロリーでも固形食より次の食事までの間隔を詰めやすくなります。プロテインパウダーを水ではなく牛乳や豆乳で溶く、食事に汁物やスムージーを足す、といった置き換えが基本です。

Iraki 2019が1日3〜6回の食事を推奨しているのも、この観点と噛み合います。1食あたり体重1kgあたり0.40〜0.55gのたんぱく質という基準に照らせば、体重70kgなら1回28〜38gで、シェイク1杯が食事の1回分に相当する量です。固形食の合間に挟むだけで、総量は着実に伸びます。

注意したいのは、液体だけでカロリーを埋めないことです。プロテイン飲料は薬ではなく食品で、トレーニングと日々の食事があって初めて意味を持ちます。飲めば筋肉がつくという性質のものではないので、あくまで固形食で足りない分を埋める手段として位置づけてください。

食事の回数を3〜6回に割る

1食あたりの量を減らして回数を増やすのは、最も再現性の高い方法です。1日3食で3,000kcalなら1食1,000kcalですが、5食に割れば1食600kcal。後者は普通の定食1食分で、無理なく続けられる範囲に入ります。

組み方としては、朝食・昼食・トレーニング前・トレーニング後・夕食という5枠が扱いやすい構成です。Iraki 2019はトレーニングの1〜2時間前と後にそれぞれ1食を置くことを推奨しており、この2枠を作るだけで自然に5食になります。

デメリットは、生活リズムによっては回数を増やせないことです。仕事中に食事を挟めない人は、3食+間食2回のような形に読み替えます。厳密に「食事」である必要はなく、カロリーとたんぱく質が入るタイミングを増やせれば目的は達成できます。

🎯 タイプ別・増量期カロリーの決め方
タイプ 上乗せ幅 優先して調整する点
トレ歴1年未満・痩せ型 +20%寄り 食事回数を4〜5回に増やす
トレ歴3年以上・中級者 +10%寄り 週0.25%のペースを厳守
デスクワーク中心 +10%から 活動レベルを1.75と過大評価しない
立ち仕事・移動が多い +15%前後 炭水化物を3〜5g/kg以上確保

失敗例:たんぱく質だけ増やしてカロリーが足りていない

増量期に体重が動かない人の典型が、プロテインの摂取量だけ増やしてしまうパターンです。1日のたんぱく質が2.2g/kgに達していても、総カロリーが維持を超えていなければ体重は増えません。増量期の主役はあくまで総カロリーで、たんぱく質は配分の話です。

原因は、「筋肉=たんぱく質」というイメージが強すぎることにあります。たんぱく質は1gあたり4kcalで、体重70kgの人が2.2g/kg(154g)を摂っても616kcal分にとどまります。3,000kcalの目標には遠く、残りは脂質と炭水化物で埋めるしかないのです。

対策は、記録画面でたんぱく質のグラム数ではなく、いちばん上の総カロリーを最初に見る習慣をつけることです。総カロリーが目標に届いていれば、その日は成功。たんぱく質が10g足りない日があっても、週単位で見れば大きな問題にはなりません。

増量期をいつ終わらせるか、判断する材料

増量期のカロリー設定と同じくらい重要なのが、いつやめるかです。終わりを決めずに始めると、気づけば1年中増量期という状態になり、体脂肪だけが積み上がります。

期間ではなく、増加率が守れているうちは続ける

「増量期は3カ月」といった期間の区切りに強い根拠はありません。判断材料になるのは、週0.25〜0.5%のペースが維持できているか、そしてトレーニングの記録が伸び続けているかです。この2つが揃っているなら、期間で区切る理由はありません。

逆に、カロリーを足しても体重の増加が止まらず脂肪側に寄っている、あるいは重量が数カ月伸びていないなら、増量期のカロリーを維持水準に戻す判断が要ります。増量期を続けるほど得られるものが減っていく局面が来る、ということです。

注意点として、季節や仕事の繁忙期で活動量が変わると、同じ摂取カロリーでも増加率が動きます。夏場に活動量が増えて体重が停滞するのは自然なことで、これを「増量期の失敗」と受け取る必要はありません。

BMIの上限が実務的なストップライン

体脂肪率での管理は、家庭用体組成計の測定値がぶれやすく判断材料にしにくい面があります。より扱いやすいのが、食事摂取基準(2025年版)が示す目標とするBMIの範囲です。18〜49歳は18.5〜24.9、50〜64歳は20.0〜24.9、65〜74歳と75歳以上は21.5〜24.9とされています。

もっとも、筋量の多い人はBMIが高く出るため、この上限を機械的に当てはめるのは適切ではありません。あくまで「明らかに超えてきたら一度立ち止まる」ためのサインとして使うのが現実的でしょう。体調や健康診断の数値に気になる変化があれば、自己判断で続けず医療機関に相談してください。

増量期を終える際は、カロリーを一気に落とさず、増やしたときと同じ100〜200kcal刻みで戻します。急に維持カロリーまで下げると食事量の落差が大きく、その反動で食べすぎる日が出やすくなります。

実は、増量期より「維持期」を長く取ったほうが1年後は変わる

意外と知られていませんが、増量期と減量期を短いサイクルで往復するより、増量後に維持カロリーで過ごす期間を長めに取るほうが、1年トータルで見た体組成の改善は進みやすくなります。増量期に増えた体重にはグリコーゲンと水分が含まれ、維持期に入るとその一部は自然に落ち着くためです。

また、増量期はトレーニングの重量を伸ばしやすい代わりに、体脂肪も同時に増える期間です。維持カロリー付近で過ごす期間があると、増えた筋量を保ったまま体脂肪の増加を止められます。「増量→減量」の2モードではなく、「増量→維持→減量」の3モードで年間を組む発想です。

デメリットは、体重が動かないので進んでいる実感が得られにくいことです。この期間の指標は体重ではなく、扱う重量と回数の記録に置き換えるとモチベーションが保てます。維持期は停滞ではなく、次の増量期の準備期間だと捉えてください。

まとめ:増量期のカロリーは+10〜20%と週0.25〜0.5%で決まる

💪 この記事の結論

増量期のカロリーは維持カロリー+10〜20%が出発点です。まず食事摂取基準で維持量を出し、週0.25〜0.5%の増加率を物差しに調整しましょう。

✅ 要点チェック
  • 基準は公的な数値で:食事摂取基準の推定エネルギー必要量から出す
  • 上乗せは小さく:+10%から始めて2週間ごとに判断する
  • PFCは順番で埋める:たんぱく質→脂質→残り全部を炭水化物へ
  • 判断は7日平均で:単日の増減はノイズ、変更は週1回まで
  • 刻みは100〜200kcal:上げるときも下げるときも同じ幅で動かす

最初の一歩は、体重計に毎朝乗って7日分の平均を出すことです。増量期のカロリーをいくつに設定するかより先に、今の食事で体重が増えているのか減っているのかを知るほうが早く進みます。平均が動いていなければ、その食事量が今のあなたの維持カロリーで、そこに10%を足した数字が明日からの目標になります。計算より先に、まず1週間の記録から始めてください。

※本記事で紹介した基準値・推奨値は執筆時点で公開されている公的資料および学術レビューに基づくものです。体調や持病、服薬の状況によって適切な食事量は変わります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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筋トレの教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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