ノートに「筋トレメニュー表」と書いたはいいものの、種目名を3つ並べたところで手が止まる——ジムでも自宅でも、これは本当によくある詰まり方です。何をやるかより先に「週に何日やるのか」「1種目を何回×何セットやるのか」という枠が決まっていないと、表は永遠に埋まりません。
結論から言うと、筋トレメニュー表は週2〜3日という頻度の枠に、8〜12回×2〜4セットという単位を流し込み、胸・背中・下肢の3つを必ず入れる——この順番で作ると10分もかからず完成します。これは誰かの主観ではなく、厚生労働省が公表している運動プログラムにそのまま書かれている組み立て方です。
この記事では、公的資料の数値を土台にしながら、週2日・週3日・自宅版・分割法という4パターンの表を、そのまま書き写せる形で載せます。あわせて、作った表が3週間で机の引き出しに消える原因と、その回避策もお伝えします。
・メニュー表の骨格になる「週2〜3日/8〜12回/2〜4セット」という公的な基準
・週2日・週3日・自宅自重・分割法の4パターンをそのまま書き写せる表
・種目を並べる順番と、休む日の入れ方
・作った表が続かなくなる2つの失敗パターンと、その直し方
筋トレメニュー表は「週2〜3日」の枠から逆算すると一気に決まる

頻度を先に決めると、埋めるマス目の数が確定する
メニュー表づくりで最初に書き込むべきは種目名ではなく、曜日です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人にも高齢者にも筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しています。ここでいう筋力トレーニングは、マシンやダンベルを使うウエイトトレーニングだけでなく、自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれると明記されています。
なぜ頻度が先かというと、週2日と決めた瞬間に「埋めるべき列は2つ」と確定し、1日に詰め込む種目数の上限も自動的に見えてくるからです。逆に種目から書き始めると、やりたい種目が10個ほど並んだ末に、それを収める曜日が足りないという事態になります。
同ガイドは全体の方向性として「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」「今よりも少しでも多く身体を動かす」とも示しています。週3日が理想に見えても、確実に確保できるのが週2日なら、表は週2日で作るのが正解です。注意したいのは、埋まらない曜日を無理に埋めようとして、結局どの曜日も実行されなくなるパターン。表は達成できるサイズで作るほうが機能します。
出典:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要)/厚生労働省
1マスに書く単位は「8〜12回×2〜4セット」で固定できる
表の各マスに書く数字は、実は迷う必要がありません。厚生労働省の標準的な運動プログラムのうち「成人を対象にした運動プログラム」は、筋力トレーニングについて8〜12回、2〜4セット、週2〜3回という具体的な処方を示しています。e-ヘルスネットのレジスタンス運動の解説も、8〜12回繰り返す形を推奨しており、公的資料の線はここで一致しています。
この単位が便利なのは、種目が変わっても同じ数字を使い回せる点です。チェストプレスもラットプルダウンもスクワットも、まずは全部「10回×3セット」と書いてしまってかまいません。表の見た目が揃うので、あとで重さだけを書き換えていけば運用できます。
セット数を2にするか4にするかは、確保できる時間で決めます。1種目3セットで3種目なら9セット、セット間の休憩を含めても30分台に収まる計算です。ただし、初回から4セットで組むと、2週目に疲労が抜けきらず休みたくなります。表を作る段階では2〜3セットに抑え、余裕が出てからセット数を足すほうが、表の寿命は長くなります。
重さは「最大挙上重量の60〜80%」——高すぎても低すぎても損
重量欄に何を書くかは、多くの人がつまずくところです。成人を対象にした運動プログラムは、筋力トレーニングの強度について最大挙上重量の60〜80%の重さを8〜12回繰り返すことを勧めており、その理由も明記しています。「これより高い強度は整形外科的な事故のリスクを高め、これより低い強度は効果が小さくなる」——つまり60〜80%という帯は、安全性と効果の両方から挟み込まれた範囲だということです。
数字で見るとイメージしやすくなります。ある種目の最大挙上重量が50kgの人なら、60%は30kg、80%は40kgです。この30〜40kgのどこかで8〜12回が限界になる設定を探す、というのが表に書く重量の決め方になります。
ただし、最大挙上重量そのものを測るのはハードルが高いのも事実です。厚生労働省の体力測定の資料は、ACSM運動処方ガイドライン(第10版)が勧める1-RMテストについて「女性や高齢者にとって負担が大きく、体格の異なる欧米人を基準にしているので直ちに参考にすることはできない」と述べています。現実的には、8〜12回で自然に限界がくる重さを探し、その重量を表に書く形で十分です。
最大挙上重量(1RM)=その種目で1回だけ挙げられる最大の重さ。10RMなら10回が限界になる重さを指します。メニュー表の重量欄は「1RMの60〜80%」で決めますが、1RMを直接測らず「8〜12回で限界がくる重さ」を探すやり方でも同じ帯に入ります。
表に必要な列は5つだけ——増やすほど書かなくなる
メニュー表は列が多いほど高機能に見えますが、記入の手間に比例して継続率が落ちます。最低限必要なのは種目名/重さ/回数/セット数/セット間の休憩の5列です。ここに「実施日」の行があれば、表として成立します。
この5列にした根拠は、あとから振り返って意味を持つ情報がこれだけだからです。前回と同じ種目・同じ重さで回数が伸びていれば前進、同じ重さで回数が落ちていれば疲労が残っている——判断材料はこの2つで足ります。厚生労働省の体力測定資料も、現実的な指標として「同じ種目の同じ重さ・同じ回数の筋疲労感」を目安にすることが妥当だとしています。
一方で、心拍数・消費カロリー・体脂肪率まで列を作ると、ジムで記入する時間が増え、そのうち書かなくなります。追加するとしても、実施日の横に体調を一言書く欄をひとつ足す程度に留めておくのが現実的です。デジタルで管理する場合も同じで、テンプレートを凝りすぎると開かなくなります。
種目選びで迷う時間をゼロにする「胸・背中・下肢」ルール
大筋群3つを埋めれば、全身メニュー表の骨格は完成する
種目選びは、部位を3つに絞ると一瞬で終わります。成人を対象にした運動プログラムは「種目を各大筋群から1種類ずつ選びましょう」とし、大きな筋群(胸・背中・下肢)をまんべんなくおこなうと効果が高まると明記しています。つまり、胸から1種目・背中から1種目・下肢から1種目を選べば、その日のメニュー表は最低限成立するということです。
同資料が例示している種目も具体的です。胸はダンベルフライまたはチェストプレス、背中はダンベルロウイングまたはラットプルダウン、下肢はダンベルスクワットまたはレッグプレス。ジムに通う人はマシン側を、自宅派はダンベル側を選べば、そのまま表に書き写せます。
この3部位が優先される理由は、単純に体積が大きく、1種目で動員される筋肉の量が多いからです。腕だけを3種目やるより、胸・背中・下肢を1種目ずつやるほうが、同じ時間で刺激できる範囲が広くなります。注意点としては、下肢は疲労感が強く、初回から3セット行うと翌日の階段がつらくなること。最初の2週間は下肢だけ2セットに抑える、という調整はしてかまいません。

ジムに入会したものの、ずらりと並んだマシンの前で足が止まる。どれから座ればいいのか、ピンは何番に挿すのか、何回やれば終わりなのか——誰も教えてくれないまま、結局…
多関節種目を先に、単関節種目を後に並べる
同じ3種目でも、並べる順番で消化のしやすさが変わります。原則は、複数の関節が同時に動く多関節種目(スクワット、ベンチプレス、ラットプルダウンなど)を先、ひとつの関節だけで動く単関節種目(サイドレイズ、アームカールなど)を後に書くことです。
理由は体力配分にあります。多関節種目は扱う重量が大きく、集中力も要求されます。先に腕や肩の単関節種目で疲れてしまうと、あとに回した多関節種目で本来の重量が扱えず、その日の総量が落ちます。逆の順番にしておけば、疲れてきた終盤でも単関節種目なら安全に追い込めます。
表に落とし込むときは、上から順に「下肢の多関節→胸の多関節→背中の多関節→(余裕があれば)肩・腕の単関節」と並べておくだけで十分です。使い分けとしては、脚を鍛えたい日は下肢を一番上に、上半身を優先したい日は胸か背中を一番上に置き換えます。注意点は、順番を毎回シャッフルしないこと。同じ順番で続けたほうが、前回との比較ができて表の意味が出ます。

スクワットは器具なしで今すぐ始められる種目なのに、「効いている感じがしない」「翌日に膝や腰が痛む」という声がいちばん多い種目でもあります。回数をこなしているのに…
肩・腕・お腹は「余白」に足す種目として扱う
肩・腕・腹筋は人気の高い部位ですが、メニュー表の中では追加枠として扱うのが妥当です。厚生労働省の運動プログラムが挙げている大筋群は胸・背中・下肢であり、肩や腕はそこに含まれていません。腕は胸や背中の種目でも一緒に動くため、優先度としては後ろになります。
実務的な足し方はこうです。基本の3種目を書いたあと、時間が10〜15分余りそうなら、肩の単関節種目を1つ、腕を1つ、腹筋を1つまで追加する。ここでも8〜12回×2〜3セットという単位は変えません。表の下段に「余裕があれば」という行を作っておき、実施した日だけチェックを入れる形にすると、やれなかった日に罪悪感が残りません。
デメリットもはっきりしています。肩と腕を毎回フルで入れると、1回の所要時間が伸び、平日の夜には収まらなくなります。腕を太くしたい人ほど、腕種目を減らして胸・背中の重量を伸ばすほうが結果的に近道になることもある——これは表を作る段階では信じにくいのですが、時間が有限である以上、外せない発想です。
有酸素運動をメニュー表のどこに書き込むか
有酸素運動を同じ表に載せるかどうかも、最初に決めておきたいポイントです。成人を対象にした運動プログラムは、有酸素運動について1回30分・息が弾むくらいを基本とし、中強度なら30〜60分、高強度なら20〜60分、週2〜5回としています。強度の目安は60〜80%最高心拍数、または自覚的運動強度で「ややきつい」です。
書き込む位置は、筋トレの後ろが扱いやすくなります。先に有酸素を長めに行うと、筋トレで扱える重量が落ちるためです。表の上では、筋トレ3種目の下に「有酸素20〜30分」という1行を足すだけで足ります。
身体活動・運動ガイド2023は成人に対し、3メッツ以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)、息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上とも示しています。通勤の徒歩がすでに一定量あるなら、有酸素の行を毎回埋めようとせず、週2回だけ書いておくのが現実的です。注意点は、有酸素の時間を伸ばして筋トレを削る流れになりやすいこと。表の上では筋トレの行を先に固定しておきます。
そのまま書き写せる筋トレメニュー表:週2日・週3日・自宅版

週2日・全身法のメニュー表
週2日しか確保できない人は、1回で全身を回す全身法が合理的です。胸・背中・下肢の3部位を毎回入れ、種目だけを日によって変えます。頻度は週2〜3日という推奨の下限に当たり、これでも公的な推奨は満たせます。
| 順番 | Aの日(例:火曜) | Bの日(例:金曜) | 回数×セット |
|---|---|---|---|
| 1(下肢) | ダンベルスクワット | レッグプレス | 8〜12回×2〜3セット |
| 2(胸) | チェストプレス | ダンベルフライ | 8〜12回×2〜3セット |
| 3(背中) | ラットプルダウン | ダンベルロウイング | 8〜12回×2〜3セット |
| 4(余裕があれば) | サイドレイズ/腹筋 | アームカール/腹筋 | 8〜12回×2セット |
| 5(有酸素) | エルゴメーター20〜30分 | トレッドミル歩行20〜30分 | ややきつい強度 |
AとBで種目を入れ替えているのは、同じ部位でも刺激の入り方を変えるためです。マシンとフリーウェイトを交互に配置すると、混雑しているジムでも待ち時間の逃げ道ができます。注意点は、AとBを同じ週の連日に詰めないこと。中2〜3日空けたほうが、2回目のパフォーマンスが落ちません。
週3日・全身法のメニュー表
週3日確保できるなら、同じ全身法のまま3日目を足すのがもっとも失敗が少ない形です。分割法に飛びつく前に、まずは全身法の3日目を追加してみてください。1部位あたりの実施回数が週2回から週3回に増えるため、総量としては大きく変わります。
組み方は、A→B→Cの3パターンを用意し、Cの日は自重寄りに軽くする方法が扱いやすくなります。たとえば月曜A(マシン中心)、水曜B(ダンベル中心)、金曜C(自重+有酸素多め)という配分です。厚生労働省の有酸素運動の推奨は週2〜5回なので、Cの日に有酸素を厚めに置いても推奨の範囲に収まります。
3日目を軽めにする理由は、疲労の蓄積を避けるためです。3日とも同じ重量・同じセット数で組むと、3週目あたりで重量が伸びなくなり、その時点で表を見るのが嫌になります。使い分けとしては、体調が良い週はCの日も通常どおり、疲れている週はCを有酸素とストレッチだけにして表の行を減らす——この可変性を最初から表に織り込んでおくのがコツです。
自宅・自重だけで組むメニュー表
器具がない場合も、表の作り方は変わりません。身体活動・運動ガイド2023は、筋力トレーニングに自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれると明記しています。負荷の目安について、e-ヘルスネットは自重トレーニングでは「できなくなるところまで実施する」が最も簡単な目安だとしています。
| 狙う部位 | 種目 | 回数×セット | きつい場合の調整 |
|---|---|---|---|
| 下肢 | スクワット | 10〜15回×2〜3セット | イスに触れるまでの浅い可動域にする |
| 胸 | 腕立て伏せ | 8〜12回×2〜3セット | 机や壁に手をついて角度をつける |
| 背中 | 懸垂/タオルローイング | できる回数×2〜3セット | 足を床につけたまま引く |
| 下肢・バランス | フロントランジ | 左右8〜12回×2セット | 歩幅を狭くする/イスに手を添える |
| 体幹 | プランク/クランチ | 2セット | 膝をついて時間を短くする |
自重版の弱点は、下肢と背中で負荷が足りなくなりやすいことです。スクワットが20回以上できるようになったら、テンポをゆっくりにする、片脚寄りにする、といった調整で難易度を上げます。背中は自宅でもっとも負荷をかけにくい部位なので、懸垂ができる環境があるなら優先的に使ってください。
失敗パターン①:初日に種目を詰め込みすぎて2週目に開かなくなる
メニュー表づくりで最も多い失敗が、作った日のテンションで種目を8つも9つも書き込んでしまうことです。原因ははっきりしていて、表を作っている時点では体が疲れていないため、所要時間の見積もりが甘くなるからです。
実際に何が起きるかというと、初回は気合いで全部こなせます。ところが2回目は所要時間の長さが記憶に残っていて足が重くなり、3回目には「今日は時間がないから」と飛ばす。ここで表が破綻します。
対策は、最初の表は必ず3〜4種目で止めることです。所要時間は準備と片付けを含めて40〜50分に収まる規模にします。物足りなさが2週続いたら、そこで初めて1種目足す。増やすタイミングを「物足りなさを2回感じたら」と決めておくと、増やしすぎを機械的に防げます。書けなかった種目は、表の外にメモとして残しておけば忘れません。
分割法に切り替えるべきタイミングは、時計が教えてくれる
2分割(上半身・下半身)の表
分割法は、部位を日ごとに分けて鍛える方法です。もっとも取り入れやすいのが上半身と下半身に分ける2分割で、1日に扱う部位が減るぶん、1部位あたりの種目数を増やせます。
組み方は、上半身の日に胸・背中・肩・腕、下半身の日に大腿前面・大腿後面・お尻・ふくらはぎを配置します。週4日確保できる人なら、上→下→休→上→下という回し方で、各部位が週2回になります。週3日なら上→下→上、翌週は下→上→下と入れ替えると、長期では均等になります。
2分割の利点は、下半身の日が明確に分かれることで、脚に十分な種目数を割けることです。全身法だと脚は毎回1種目になりがちですが、2分割なら3種目入ります。一方でデメリットもあり、上半身の日は種目数が多くなって所要時間が伸びます。表を作る段階で、上半身の日は5種目まで、と上限を書き込んでおくと膨張を防げます。
3分割(プッシュ・プル・脚)の表
| 日 | 主な部位 | 種目の並べ方 | 回数×セット |
|---|---|---|---|
| プッシュ | 胸・肩・上腕三頭筋 | チェストプレス→ダンベルフライ→肩→三頭 | 8〜12回×2〜4セット |
| プル | 背中・上腕二頭筋 | ラットプルダウン→ダンベルロウイング→二頭 | 8〜12回×2〜4セット |
| 脚 | 大腿・お尻・ふくらはぎ | スクワット→レッグプレス→ランジ→ヒールレイズ | 8〜12回×2〜4セット |
3分割は、押す動作・引く動作・脚という動作方向で分ける形です。押す日に胸と三頭を一緒にするのは、チェストプレスで三頭筋がすでに動員されているためで、同じ日にまとめると回復の管理がしやすくなります。
ただし、週3日で3分割にすると各部位は週1回しか回ってきません。頻度が下がるぶん、1回あたりのセット数を厚くする必要があり、所要時間は全身法より伸びます。時間が読めない人は、2分割で止めておくほうが表どおりに動けます。

ダンベルを買ったはいいけれど、「今日は何をやればいいんだっけ」と毎回スマホで種目を探していませんか。じつはダンベルトレーニングがうまくいかない原因の大半は、種目…
切り替えのサインは「1回の所要時間」に出る
分割法に移るべきかどうかの判断は、感覚ではなく所要時間で決められます。全身法のまま種目を足していくと、いずれ1回が90分を超えます。この時点で「1回が長すぎて行く気にならない」という現象が起き、頻度が落ちます。ここが切り替えのサインです。
逆に言えば、1回が60分以内に収まっているうちは全身法のままで問題ありません。全身法は1部位を週2〜3回刺激できるため、頻度の面では分割法より有利です。厚生労働省の推奨も頻度は週2〜3日であり、部位を分けることは条件になっていません。
切り替える際の注意点は、分割にした瞬間に週の合計日数を増やさないと、1部位あたりの実施回数が減ることです。週3日のまま3分割にすると、胸を鍛えるのは週1回になります。分割は「日数を増やせる人の選択肢」だと考えておくと、判断を間違えません。
実は、初心者ほど分割法で伸びが遅くなることがある
意外と知られていないのですが、分割法は上級者向けの解決策であって、初心者にとっては必ずしも近道ではありません。理由は単純で、初心者の伸びしろは「同じ動作を繰り返して技術を覚えること」に大きく依存しているからです。
スクワットもベンチプレスも、最初の数か月は重量が伸びる要因の多くがフォームの習熟です。週1回しかその種目に触らない3分割より、週2〜3回触る全身法のほうが、動作の記憶が定着しやすくなります。表の上でも、全身法なら同じ種目が繰り返し登場するので、前回との比較がしやすいという副次的な利点があります。
分割法が有利になるのは、1部位に3種目以上を割きたくなった段階です。その水準に来ると全身法では時間が足りません。逆に、まだ1部位1種目で組んでいる段階なら、分割にするメリットはほとんどないと考えて差し支えありません。ここを取り違えると、SNSで見た上級者の分割表を真似して、伸びない数か月を過ごすことになります。
休む日を書き込まないメニュー表は、どこかで必ず破綻する
同じ部位は中1〜2日空ける前提で曜日を置く
メニュー表は「やる日」だけを書くと、休養の設計が抜け落ちます。e-ヘルスネットは、レジスタンス運動についてトレーニング間隔をあける必要があると述べています。一般的な目安として、同じ部位を続けて鍛えるより中1〜2日空けるほうが、次回のパフォーマンスが保たれます。
実務的には、週2日なら火・金、週3日なら月・水・金というように、間に必ず1日以上を挟む配置にします。土日にまとめて2日連続でやる形は、実行はしやすいものの、月曜から金曜までまったく刺激が入らない期間ができます。可能なら平日に1日ずらすほうが、週の中での分散が良くなります。
注意点は、休養日を「何もしない日」と定義しないことです。身体活動・運動ガイド2023は座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないよう注意することも推奨しています。休養日の行には「歩く」「ストレッチ」など軽い内容を書いておくと、表全体が機能します。
有酸素運動と筋トレを1枚の表に共存させる
有酸素運動を別の表で管理すると、片方しか続きません。同じ表に載せてしまうのが実用的です。成人を対象にした運動プログラムでは、有酸素運動は中強度なら30〜60分、高強度なら20〜60分で週2〜5回、筋力トレーニングは8〜12回・2〜4セットで週2〜3回とされています。この2つは並行して行うことが前提の書き方になっています。
組み合わせ方は、筋トレの日の後半に有酸素を20〜30分入れるか、休養日に有酸素だけを行うかの2択です。前者は通う回数が少なくて済み、後者は1回の所要時間が短くなります。時間がまとめて取れる人は前者、平日に細切れの時間しかない人は後者が向きます。
休養日の行に「歩行」を入れておくと、身体活動・運動ガイド2023が示す成人の目安(3メッツ以上の身体活動を1日60分以上、1日約8,000歩以上)に自然に近づきます。筋トレの行が空いた日でも、表にチェックが入るので継続の実感が途切れません。
週の合計セット数で表を見直すと過不足がわかる
表ができたら、週単位で合計セット数を数えてみてください。胸を1回3セット、週2回やっているなら週6セットです。この数え方をしておくと、「増やしたい」と思ったときに、どの部位をどれだけ足すのかを具体的に決められます。
増やし方には順番があります。まずセット数を1つ足し、それでも余裕があれば頻度を週2回から週3回に増やす。いきなり両方を増やすと、疲労が抜けなくなったときに原因が特定できません。表の余白に「先週との差」を書いておくと、変更の履歴が残ります。
注意すべきは、増やす方向にしか目が向かなくなることです。仕事が忙しい週は、意図的にセット数を減らす判断も必要になります。厚生労働省の運動プログラムは、運動終了1時間以上たっても残存する疲労感や筋肉の痛みがある場合、また前回と比べて同じ強度や時間を維持できない場合は、プログラムを中止してかかりつけ医に相談するよう示しています。表の数字を守ることより、この基準のほうが優先されます。
失敗パターン②:毎日同じ部位を書き込んで、腕だけ回復しなくなる
もうひとつ多い失敗が、好きな部位を毎日の行に書いてしまうケースです。典型的なのは腕で、月曜にアームカール、火曜に腕立て伏せ、水曜に懸垂と書くと、表の上では違う種目なのに、上腕二頭筋や三頭筋は3日連続で使われています。
原因は、表を「部位」ではなく「種目名」で管理していることにあります。種目名だけを見ていると、どの部位が何回動員されているかが見えません。結果として、腕だけ張りが取れない、握力が先に落ちて背中の種目が持たない、といった詰まり方をします。
対策はシンプルで、表の各行の左端に部位名を書く列を1つ足すことです。胸・背中・下肢・肩・腕・体幹と書いておけば、週の中で同じ部位が連日になっていないかが一目でわかります。それでも腕を毎日触りたくなるなら、腕の日は他の部位のセット数を減らす、という交換条件を表に書き込んでおくと歯止めが効きます。
記録欄のないメニュー表が、3週間で捨てられる理由
前回の重さと回数を書く欄が、続ける理由になる
予定表としてのメニュー表は、実は3週間ほどで役目を終えます。種目も回数も覚えてしまうからです。そこから先も表を開き続けてもらうには、記録欄が要ります。
厚生労働省の体力測定資料は、客観的な筋力評価の難しさに触れたうえで、現実的には「同じ種目の同じ重さ・同じ回数の筋疲労感」を個人のトレーニング効果の目安にすることが妥当だとしています。つまり、前回と同じ条件で今回どうだったかを比べられる状態こそが、もっとも実用的な指標だということです。
記録欄は凝る必要がありません。種目名の右に、日付ごとの「重さ×回数」を書く小さなマスを3〜4個並べておくだけです。ジムで書き込む時間は1種目あたり数秒で済みます。デメリットは、書き忘れた回が空欄になって気持ち悪いこと。空欄は空欄のまま進めてよい、と最初に決めておくと止まりません。
伸ばす順番は「回数が先、重さが後」
記録欄があると、次に何を変えるかが決められます。原則は、回数を伸ばしてから重さを上げる順番です。8〜12回という帯を使っているなら、12回が余裕を持ってできるようになった時点で重さを一段上げ、また8回付近から積み直します。
この順番にする理由は、安全性です。回数が伸びていない段階で重さを上げると、フォームが崩れたまま高い負荷を扱うことになります。成人を対象にした運動プログラムも、最大挙上重量の60〜80%より高い強度は整形外科的な事故のリスクを高めると明記しています。
使い分けとしては、体調が悪い日は無理に重さを上げず、前回と同じ重さで回数だけ確認する日にします。表の上では、重さの欄に「据え置き」と書けば十分です。注意点は、上げ幅を大きくしすぎないこと。一気に上げると回数が8回を大きく割り込み、次の週にまた戻すことになります。
「きつさ」を一言書く欄が、疲労の蓄積を可視化する
数値だけでは拾えない情報もあります。同じ重さ・同じ回数でも、日によって体感はまったく違います。表の右端に「楽・普通・きつい」の3段階だけでも書いておくと、疲労の蓄積が見えるようになります。
この一言が効くのは、休むべきタイミングの判断です。同じ条件で「きつい」が2回続いたら、その週はセット数を1つ落とす。この運用にしておくと、疲労が溜まりきる前に手が打てます。厚生労働省の運動プログラムでも、有酸素運動の強度は自覚的運動強度で示されており、主観的なきつさは公的な処方でも使われている指標です。
ただし、きつさの記録は主観であり、体調・睡眠・食事の影響を強く受けます。個人差も大きく、他人の記録と比べる意味はありません。自分の過去の記録との比較にだけ使う——この使い方に限定すると、判断材料として機能します。
目的と体力に合わせてメニュー表を作り替える
運動を再開する人・中高年の表は、回数を増やして重さを下げる
久しぶりに体を動かす人は、同じ8〜12回でも設定を変えます。厚生労働省の「高齢者を対象にした運動プログラム」は、筋力トレーニングを8〜12回(初期は10〜15回)、1〜4セット、週2〜3回とし、負荷は「非常に軽い〜やや重い」、日常生活より筋肉に負荷がかかれば効果が出るとしています。
もうひとつ特徴的なのが、有酸素運動とバランス運動が加わる点です。同プログラムは、有酸素運動・筋力トレーニングにバランス運動も加えたマルチコンポーネント運動がすべての高齢者に推奨されるとし、バランス運動はできれば2種類、8〜12回(初期は10〜15回)・1〜4セット・週2〜3回としています。例として挙がっているのはヒールレイズ(静的バランス)とフロントランジ(動的バランス)です。
成人を対象にした運動プログラムは、久しぶりに運動する時は軽い強度と短めの時間から始め、4〜6週間は強度をそのままに徐々に時間を延ばすよう示しています。表の上では、最初の4〜6週は重量欄をすべて「据え置き」にして、セット数だけを増やす期間として設計するとこの流れに乗れます。膝や腰に痛みがある場合は、事前にかかりつけ医や運動指導者に相談してから進めてください。
体を絞りたい人は、メッツで運動量を見積もる列を足す
減量を目的にする場合、筋トレのメニュー表に「メッツ」の列を足すと、週の運動量が把握しやすくなります。メッツは安静時を1とした運動強度の指標で、身体活動・運動ガイド2023も成人に週23メッツ・時以上の身体活動を推奨しています。
| 運動の内容 | メッツ | メニュー表での位置づけ |
|---|---|---|
| レジスタンストレーニング(8-15回を繰り返す複合的エクササイズ) | 3.5メッツ | 通常の8〜12回×2〜4セットはこの帯 |
| 自重トレーニング(スクワット・ランジ・腕立て伏せ等/全般) | 3.0メッツ | 自宅版の基本行 |
| 自重トレーニング(高強度) | 6.5メッツ | 休憩を詰めて追い込む日 |
| レジスタンストレーニング(きつい労力/パワーリフティング等) | 6.0メッツ | 高重量で組む日 |
| サーキットトレーニング(自重) | 6.0メッツ | 有酸素を兼ねたい日 |
| フィットネスクラブでの運動(体操とウェイトを組み合わせた1回) | 5.0メッツ | ジム1回分の目安 |
この表からわかるのは、休憩を長めに取る通常の筋トレは3.5メッツ前後で、有酸素運動としての比重は大きくないということです。減量が目的なら、筋トレの行とは別に有酸素の行を確保するほうが、週のメッツ・時は積み上がります。注意したいのは、メッツを増やすために筋トレのセット間休憩を極端に詰めると、扱える重量が落ちること。目的が筋力なのか消費量なのかを、表の欄外に書いておくと迷いません。
目的別に、最初に選ぶ表のパターンを決める
| 状況・目的 | 選ぶ表 | 最初に固定する数字 |
|---|---|---|
| ジムに通い始めたばかり | 週2日・全身法(マシン中心) | 8〜12回×2〜3セット |
| 器具なしで自宅から始めたい | 自宅・自重版(週2〜3日) | できなくなるところまで×2〜3セット |
| 体を絞りたい | 週3日・全身法+有酸素の行 | 有酸素20〜30分を週2〜5回 |
| 運動を再開する・中高年 | 高齢者向けプログラム型+バランス運動 | 初期は10〜15回×1〜4セット |
| 1回60分では足りなくなった | 2分割(上半身・下半身) | 1日5種目まで |
この振り分けの狙いは、最初の1枚で悩む時間を削ることです。どの行を選んでも、8〜12回・2〜4セット・週2〜3回という土台は共通なので、あとから乗り換えても表の作り直しにはなりません。デメリットとしては、目的が途中で変わったときに表の性格が中途半端になること。3か月に一度、目的の欄を書き直す前提で運用するのが現実的です。
表の隅に「中止して相談する条件」を書いておく
厚生労働省の「成人を対象にした運動プログラム」は、運動時に次の症状を認めたらプログラムを中止し、かかりつけ医と相談するよう示しています。
①回復に5分以上かかるほどの呼吸困難
②運動終了1時間以上たっても残存する疲労感や筋肉の痛み
③前回と比べて同じ強度や時間を維持できない
また、普段運動しない人が急に運動する時は心血管系の事故のリスクが高まるため、軽い強度と短めの時間から始めることが推奨されています。
この3項目を表の欄外に書いておく意味は、判断を感覚に委ねないためです。「今日はなんとなくきつい」で休むと後ろめたさが残りますが、①〜③に当てはまるから中止したのだと言えれば、休養は計画の一部になります。
特に③は見落とされがちです。前回できた重さと回数が維持できない状態が続いているとき、原因は根性ではなく回復不足か体調にあります。記録欄があれば、この判断が数字でできます。表の上で気になる症状が続く場合は、自己判断でセット数を増やさず、かかりつけ医や運動指導者に相談してください。
出典:成人を対象にした運動プログラム/厚生労働省・レジスタンス運動/e-ヘルスネット
まとめ:メニュー表は「頻度・回数・部位」の3つで完成する
最初の一歩は、紙を1枚用意して曜日を2つ書くことです。そこにスクワット・チェストプレス・ラットプルダウンと3行だけ書き、右端に重さと回数を書く空欄を並べる——それだけで、公的な推奨を満たすメニュー表になります。種目を足すのは、物足りなさを2回感じてからで間に合います。分割法や週4日への拡張は、その表が1か月続いてから考えれば十分です。
※各プログラムの数値は厚生労働省・e-ヘルスネットおよびメッツ表の公表値に基づいています。持病がある方、体に痛みがある方は、開始前にかかりつけ医や運動指導者にご相談ください。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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