足上げベンチプレスは重量9割が正解|胸に効く3つの型と肩・腰を守るやり方

足上げベンチプレスは重量9割が正解|胸に効く3つの型と肩・腰を守るやり方のアイキャッチ画像

ジムでベンチ台に寝たまま、両足を宙に浮かせてバーを押している人を見かけたことはありませんか。「あれは上級者の裏技?」「足を上げると腰に優しいって本当?」と気になりつつ、自分が真似していいのか迷っている人は多いはずです。

先に結論をお伝えすると、足上げベンチプレスは脚の踏ん張りを消して、胸・肩・腕だけで押す力を確かめる練習種目です。扱える重量は通常のベンチプレスより1割ほど下がるのが一般的ですが、そのぶん上半身の弱点がはっきり見えます。一方で、ブリッジが低くなるぶん可動域が広がり、肩への負担は増えます。「腰に優しい」と単純に言い切れる種目でもありません。

この記事では、スペインの研究チームによる筋電図データ、日本パワーリフティング協会のルールブック、厚生労働省e-ヘルスネットの負荷の目安をもとに、足上げベンチプレスの正しいやり方、重量設定、組み込み方をトレーナー目線で整理しました。

💪 この記事でわかること

・足上げベンチプレスと通常ベンチプレスの違い(3種類のフォームを含む)
・研究データで見る、足を浮かせたときの筋活動の変化
・通常ベンチの90%を軸にした重量設定と、肩・腰を守るやり方
・目的別の組み込み方と、やらない方がいい人の条件

目次

足上げベンチプレスとは?足を浮かせるだけで別種目になる理由

足上げベンチプレスとは?足を浮かせるだけで別種目になる理由の解説画像

脚の力を「使えなくする」のが最大の狙い

足上げベンチプレスは、ベンチ台に仰向けになり、両足を床から離した状態でバーベルを上下させる種目です。動き自体は普段のベンチプレスと同じですが、狙いは正反対と言ってよいでしょう。

通常のベンチプレスでは、足で床を踏みしめる力(レッグドライブ)が背中のアーチを支え、押し上げの初動を後押しします。足を浮かせるとこの土台がなくなり、上半身だけでバーをコントロールしなければなりません。だから「胸・肩・腕そのものの押す力」がごまかしなく表に出ます。

この特徴が活きるのは、通常ベンチで重量が伸び悩んでいる人や、脚の踏ん張りに頼りすぎてフォームが崩れがちな人です。逆に、これからベンチプレスを覚える段階の人には、足を使った基本フォームを先に固める方が遠回りになりません。

注意したいのは、脚の支えがないぶん体が左右にぶれやすい点です。慣れないうちはバーが片側に傾いたり、ラックへ戻す動作で体がずれたりします。最初から高重量を扱う種目ではない、と理解しておきましょう。

足の高さで3つのフォームに分かれる

ひと口に足上げベンチプレスと言っても、足の位置によって3つの型があります。ベンチプレスのフォーム解説で知られるベンチプレス研究所の分類では、次のように整理されています。

1つ目は一般的な足上げで、足を腰より上に上げる型です。ブリッジが最も低くなり、上半身の純粋な力が問われます。2つ目はパラフォームで、足を腰と同じ高さに真っ直ぐ伸ばす型です。3つ目はラーセンプレスで、足を伸ばしたまま踵を少しだけ浮かせる型。通常フォームに最も近く、足上げの入門に向いています。

どれを選ぶかは目的次第です。通常ベンチとのつながりを保ちたいならラーセンプレス、体幹のブレを徹底的に消したいなら一般的な足上げ、と考えると選びやすくなります。

ただし、型によって扱える重量も可動域も変わります。記録を比較するときは毎回同じ型で行わないと、伸びたのか型が変わっただけなのか判断できなくなる点に気をつけてください。

📖 用語チェック

ブリッジ=ベンチ上で背中を反らせて作るアーチ。胸の位置が高くなり、バーの移動距離が短くなる。
レッグドライブ=足で床を押して生まれる力を、上半身の押し上げに伝える技術。
1RM=1回だけ挙げられる最大重量。

通常ベンチと比べて変わるのは「土台」と「可動域」

足を浮かせて変わる要素は、大きく分けて2つです。1つは体を支える土台、もう1つはバーの移動距離(可動域)です。

土台については、床に足がついている状態では、足・お尻・肩甲骨の3点で体を固定できます。足を上げると支点はお尻と肩甲骨だけになり、腹筋や体幹でバランスを取る必要が出てきます。可動域については、足で押せないぶんブリッジが低くなり、胸の位置が下がります。結果としてバーを下ろす距離が長くなり、大胸筋がより伸ばされた位置から押し返すことになります。

このため、同じ重量でも足上げのほうが体感の負荷は重くなります。胸のストレッチを感じやすいという声が多いのはこのためです。

一方で、可動域が広がるということは、肩関節が深い位置まで動かされるということでもあります。肩の柔軟性が足りない人が無理に深く下ろすと、肩の前側に違和感が出やすくなります。広い可動域はメリットであり、同時にリスクでもあると覚えておきましょう。

足上げベンチプレスで得られる3つのメリットを研究データで確認

胸・肩・腕の筋活動は足つきより高くなる

足を浮かせると上半身の筋肉はより働くのか。この疑問を検証したのが、Muyorらが2019年に学術誌PLOS ONEで発表した研究です。

対象は筋トレ経験4年以上の健康な若年男性20名で、1RMの60%の負荷を使い、「足を床につけ膝90度」と「股関節と膝を90度に曲げ足を浮かせる」の2条件で筋電図を比べました。その結果、足を浮かせた条件では、測定したすべての筋で活動が有意に高くなっています。大胸筋上部の増加は約4%でした。

数字だけ見ると小さく感じるかもしれませんが、同じ重量のまま上半身への刺激を少し上乗せできる、と捉えると使い道が見えてきます。重量を増やさずに負荷を高めたい減量期や、関節に高重量をかけたくない時期の選択肢になります。

ただし、この研究は若い経験者男性のみが対象で、2秒のコントロールテンポで行われています。初心者や女性、爆発的に挙げる場合に同じ結果になるかは確認されていません。「足上げのほうが胸に効く」と言い切るのではなく、「条件付きで筋活動が高まるデータがある」と理解しておくのが正確です。

体幹と腹筋が自動的に動員される

同じ研究で注目したいのが、体幹まわりの数値です。増加が大きかったのは大腿直筋と外腹斜筋(約5%)、腹直筋(約3%)で、上半身の押す筋肉よりも伸び幅が大きくなっていました。

理由はシンプルで、足という支えを失った体を、腹筋と股関節まわりの筋肉で安定させる必要があるからです。研究チームも、腹部の活動の高まりは体幹を安定させる必要から生じると説明しています。

これは、ベンチプレス中に体がぐらつく人や、バーが左右に傾きやすい人にとって意味のある刺激です。体幹で体を固める感覚が身につくと、足をつけた通常ベンチに戻したときにも上半身がぶれにくくなります。

とはいえ、足上げベンチプレスは腹筋を鍛えるための種目ではありません。体幹の活動が高まるのはあくまで「安定させるため」の副産物です。腹筋を育てたいなら、専用の種目を別に行う方が効率的です。

押す力の弱点がごまかしなく見える

3つ目のメリットは、データというより練習上の価値です。足の力を使えないため、通常ベンチの記録のうち「脚とフォームの技術で稼いでいた分」が取り除かれ、上半身の実力が数字に表れます。

たとえば、通常ベンチは伸びているのに足上げの重量がまったく伸びない場合、レッグドライブやブリッジの技術に記録を頼っている可能性があります。反対に、足上げは強いのに通常ベンチが伸びない場合は、足の使い方やセッティングに改善の余地があると考えられます。

このように、通常ベンチと足上げの比率を見ることで、次に何を練習すべきかの判断材料になります。具体的な比率の目安は次の見出しで詳しく解説します。

注意点として、この比較は同じ日・同じ型で測らないと正確になりません。疲労の残った日に足上げだけ測ると、実力より低い数字が出て判断を誤ります。比べるときは条件をそろえましょう。

📊 足つきと足上げの違い(筋トレの教科書調べ)
項目 足つき(通常) 足上げ
体を支える点 足・お尻・肩甲骨 お尻・肩甲骨のみ
ブリッジの高さ 高く組める 低くなる(可動域が広がる)
筋活動(1RMの60%) 基準 測定した全筋で有意に高い
扱える重量の目安 100% 90%ぐらいに収束
肩への負担 ブリッジで軽減しやすい 可動域が広く増えやすい
パワーリフティング大会 正式フォーム 反則(足が床につかない)

出典:Muyorら(2019)PLOS ONE、ベンチプレス研究所、日本パワーリフティング協会ルールブックをもとに作成

重量はどれくらい落ちる?通常ベンチの90%が目安になる理由

重量はどれくらい落ちる?通常ベンチの90%が目安になる理由の解説画像

足上げの記録は通常ベンチの9割に落ち着く

足上げベンチプレスで扱える重量は、通常のベンチプレスより下がります。ベンチプレス研究所の解説では、足上げの重量は通常フォームに換算すると90%ぐらいに収束するとされています。

下がる理由は、前の見出しで触れた「土台」と「可動域」の2つです。レッグドライブが使えず、ブリッジが低くなってバーの移動距離が伸びるため、同じ筋力でも挙げられる重さが減ります。

具体的には、通常ベンチが60kgの人なら足上げは54kg前後、通常ベンチが100kgの人なら90kg前後が1つの目安です。最初に試すときはこの数字を上限と考え、もっと軽い重量から入ると安全です。

なお、この90%という数字は多くのリフターの傾向を示したもので、個人差があります。足を使う技術の差によって比率は人それぞれなので、自分の比率を知るには両方の記録を取るのが確実です。

比率で弱点を読み解く3段階の目安

足上げと通常ベンチの比率は、練習の方向性を決める手がかりになります。ベンチプレス研究所は次の3段階で評価しています。

比率が90%未満なら足上げの強化が必要、つまり上半身そのものの押す力を伸ばす余地があります。90〜95%未満なら通常レベルで、バランスが取れている状態です。95%以上なら、上半身の力に対して足の使い方やブリッジの技術が追いついていないため、通常ベンチ側の強化が必要と判断できます。

たとえば通常ベンチ100kgの人が足上げで95kgを挙げられるなら、伸びしろは足を使った技術側にあります。フォームやセッティングを見直すだけで、通常ベンチの記録が動く可能性があります。

ただし、この比率はあくまで練習方針の目安です。比率を良くすること自体が目的になると本末転倒なので、自分の目標(見た目の筋肥大か、記録か)に合わせて使ってください。

📊 足上げ/通常ベンチの比率と練習方針
比率 評価 優先したい練習
90%未満 足上げの強化が必要 足上げ・ダンベル種目で上半身の押す力を伸ばす
90〜95%未満 通常レベル 現状のバランスを保って両方を伸ばす
95%以上 通常ベンチの強化が必要 レッグドライブ・ブリッジ・セッティングを見直す

出典:ベンチプレス研究所の評価目安

練習重量は1RMの60〜80%から組み立てる

足上げベンチプレスを普段の練習に使うなら、重量は足上げ自身の1RMを基準に決めます。厚生労働省のe-ヘルスネット「レジスタンス運動」では、ウエイトトレーニングの負荷として最大挙上重量の60〜80%で8〜12回の反復が推奨されています。

足上げの1RMを測っていない場合は、通常ベンチの1RMに90%を掛けた値を仮の1RMとし、そこから練習重量を出すと計算しやすくなります。通常ベンチ60kgの人なら仮の1RMは54kg前後で、そこから無理なく8〜12回できる重量を探します。通常ベンチの80%にあたる48kgで8回が余裕をもってこなせるかどうか、が1つの確認ポイントです。

足上げは体幹の安定にも力を使うため、同じ%でも通常ベンチより疲れやすい傾向があります。セットの終盤にバーが傾き始めたら、それが限界のサインです。

なお、1RMの換算式や測り方は別記事で詳しく整理しています。

あわせて読みたい
ベンチプレスのRM換算は÷40が基準|1RMの出し方と3つの式の使い分け
ジムでベンチプレスをしていると、「今の自分のMAXは何kgなんだろう」と気になる瞬間が必ず来ます。とはいえ、いきなり限界重量に挑戦するのは危険ですし、毎回測って…

正しいやり方を5ステップで|脚より先に肩甲骨を固める

セットアップは通常ベンチと同じ順番で

足上げベンチプレスのやり方は、足を上げる直前まで通常のベンチプレスと同じです。ベンチプレス研究所が示す手順を、トレーナー目線の補足を加えて番号で整理します。

①ベンチ台に仰向けに寝て、目線がバーの真下に来る位置に体を合わせる
②肩甲骨を寄せて下げ、胸を張った状態で背中をベンチに固定する
③バーを肩幅より少し広めに握り、親指まで巻き込んでしっかり握る
④いったん足で床を押して軽くブリッジを作り、お尻をベンチにつける
⑤肩甲骨の位置を崩さないまま、足を床から上げる

この手順の要は②と⑤です。足を上げると体を支える点が減るので、肩甲骨の固定が甘いと押している最中に肩がすくみ、胸ではなく肩の前側に負荷が逃げてしまいます。

よくある失敗は、足を先に上げてから肩甲骨を寄せようとすることです。足が浮いた状態では背中を動かす支点がなく、肩甲骨を十分に寄せられません。必ず「肩甲骨→ブリッジ→お尻→足」の順に作ってください。

足の位置は膝90度から始める

足を上げたら、まずは股関節と膝をそれぞれ90度に曲げた位置で止めるのがおすすめです。Muyorらの研究でもこの姿勢が使われており、太ももが床と垂直、すねが床と平行になる形です。

この位置は腰が反りにくく、足の重さで体が傾きにくいため、足上げの入門に向いています。慣れてきたら足首を組んだり、膝を少し伸ばしたりと好みの位置を探してもかまいません。

いきなり足を高く上げすぎると、骨盤が後ろに丸まってお尻がベンチから浮きやすくなります。反対に足を低く伸ばしすぎると、腰が反って腰椎に負担が集まります。どちらも安定しないので、膝90度を基準に微調整しましょう。

研究チームは、足を浮かせた姿勢では股関節を曲げる筋肉が働き、腰椎へのストレスにつながる可能性を指摘しています。腰に不安がある人は無理に続けず、違和感があれば専門医に相談してください。

下ろす深さとラックアップ・ラックの戻し方

バーは胸の下部、みぞおちより少し上あたりに下ろします。足上げはブリッジが低くなるため、通常ベンチより下ろす距離が長くなり、そのぶん胸が深くストレッチされます。

下ろす深さは「胸に軽く触れるところまで」が基本です。肩の前側に詰まる感覚や痛みがあれば、胸に触れる手前で止めても問題ありません。可動域を確保することより、肩を傷めないことを優先しましょう。

見落としやすいのが、ラックから外すときと戻すときです。足が浮いた状態でラックアップすると体が頭側にずれやすいため、ラックアップは足を床につけたまま行い、バーを構えてから足を上げると安定します。戻すときも、最後のレップを終えたら足を床に下ろしてからラックに戻すと安全です。

バーを下ろしたときに弾ませて挙げるのは避けてください。足上げは体幹の支えが弱いので、反動を使うとバーの軌道が乱れ、片側に傾く原因になります。

⚠️ 始める前にチェック

・セーフティバー(またはパワーラックのセーフティ)を、胸に下ろしたときのバーより少し低い位置にセットしたか
・ラックアップは足を床につけたまま行う段取りになっているか
・最初の数セットは通常ベンチの1RMの60%程度から入っているか
・肩や腰に違和感がある日は無理に行わないと決めているか

セーフティバーの高さの決め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

あわせて読みたい
ベンチプレスのセーフティバーは高すぎるが正解|1人で潰れても抜け出せる高さの決め方
ベンチプレスで一番怖いのは、重い重量に挑戦することではありません。上がらなくなったバーベルが、胸の上に乗ったまま動かなくなることです。ジムでラックの横についてい…

肩と腰を痛めないために知っておきたい落とし穴

失敗例①:通常ベンチと同じ重量で挑んで肩を痛める

足上げベンチプレスで多い失敗の1つ目は、通常ベンチと同じ重量でいきなり挑戦することです。

よくあるのは、「足上げは胸に効くらしい」と聞いて、普段8回できる重量のまま足を上げてみるケースです。ブリッジが低くなった分だけバーが深く下り、肩が普段より大きく引き伸ばされた状態で、普段と同じ重さを受け止めることになります。結果として、肩の前側に鋭い張りが出て、その後の数週間は押す種目ができなくなる、というのが典型的な流れです。

原因は、重量が下がることと可動域が広がることを、セットで理解していないことにあります。ベンチプレス研究所も、ブリッジが低くなって可動域が拡大し、肩関節への負担が増えると注意を促しています。

対策は、最初の1〜2週間は通常ベンチの1RMの60%程度から始め、フォームが安定してから少しずつ重量を上げることです。肩の前側に違和感が出たら下ろす深さを浅くし、それでも続くなら足上げそのものを中止してください。

「腰に優しい」はどこまで本当か

実は、足上げベンチプレスが「腰に優しい」と言い切れるかどうかは、意外と知られていない論点です。

確かに、足を上げると強く腰を反らせる高いブリッジは組めなくなります。腰を大きく反らせるのが苦手な人にとって、背中のアーチを抑えられるのは利点です。この点から「腰に優しい」と紹介される場面も見かけます。

一方で、Muyorらの研究では、足を浮かせた姿勢で股関節を曲げる筋肉(大腿直筋など)の活動が高まり、それが腰椎へのストレスにつながる可能性を研究チーム自身が指摘しています。つまり、「反りが減る」ことと「腰に負担がない」ことは別の話なのです。

腰に不安がある人にとって、足上げは必ずしも安全な代替策ではありません。腰の痛みがある場合は自己判断でフォームを変えるより、整形外科などの専門医に相談するのが先です。痛みがなくても、足上げで腰に張りを感じるなら、足を下ろしたラーセンプレスや通常ベンチに戻す方が無難です。

やらない方がいい人の条件

足上げベンチプレスは誰にでも勧められる種目ではありません。ベンチプレス研究所は、肩を傷めるリスクが高いとして、男性でMAXが80kg未満の人は実施しない方が良いという見解を示しています。

この線引きの背景には、ベンチプレスの基本フォームが固まる前に足上げを取り入れると、肩甲骨の固定やバーの軌道が身につかないまま可動域だけが広がる、という問題があります。数字そのものより、「通常ベンチのフォームが安定しているか」が本質だと考えてください。

女性やベンチプレスを始めて間もない人も、まずは足をつけた通常フォームで、肩甲骨の寄せとバーの軌道を安定させることを優先しましょう。胸のストレッチを強めたいだけなら、ダンベルプレスのように肩の動きの自由度が高い種目の方が負担を調整しやすい場合があります。

また、肩や腰に痛みを抱えている人、セーフティバーのない環境でひとりで練習する人も、足上げは避けるのが賢明です。バランスを崩したときに体勢を立て直す手段が限られるためです。

普段のメニューにどう組み込む?目的別の使い分け

メイン種目ではなく「補助種目」に置く

足上げベンチプレスは、メインの通常ベンチの後に行う補助種目として組み込むのが基本です。

理由は2つあります。1つは、扱える重量が通常ベンチより1割ほど低いため、メインに置くと全体の練習強度が下がること。もう1つは、体幹の安定にも力を使うので、疲れていない状態で通常ベンチを先に行った方が、フォームと重量の両方を確保しやすいことです。

具体的な流れとしては、通常ベンチを数セット行ったあと、足上げを1RMの60〜70%程度で8〜12回×2〜3セット行う形が組みやすいでしょう。e-ヘルスネットが推奨する週2〜3回の筋トレ頻度に合わせるなら、胸の日のうち1回だけ足上げを入れ、もう1回は通常ベンチだけにする、という配分も現実的です。

注意点として、足上げを毎回の胸トレに入れる必要はありません。肩への負担が通常ベンチより大きいため、頻度を上げすぎると疲労が抜けにくくなります。

失敗例②:足上げばかり続けて通常ベンチが伸びなくなる

2つ目の失敗は、足上げにハマりすぎて、通常ベンチの練習量が減ってしまうパターンです。

「胸に効く感じがする」「腹筋も使える」と足上げを気に入り、胸の日のメイン種目を足上げに置き換えた結果、数か月後に通常ベンチの記録がまったく伸びていない、あるいは下がっている、というケースは珍しくありません。

原因は、足上げと通常ベンチでは使う技術が違うことにあります。通常ベンチではレッグドライブやブリッジの技術が記録を左右しますが、足上げばかり続けるとこの技術を練習する機会が減ります。前述の比率で言えば、足上げが強いのに通常ベンチが伸びない「95%以上」の状態に陥りやすくなるのです。

対策は、通常ベンチをメインに残し、足上げは補助と割り切ることです。そして数か月に1度、両方の記録を同じ条件で測って比率を確認しましょう。比率が95%を超えてきたら、足上げの量を減らして通常ベンチの技術練習に時間を回すサインです。

通常ベンチが伸び悩む原因については、こちらの記事でも整理しています。

あわせて読みたい
ベンチプレス弱い人の特徴は7つ|体重比0.5倍で止まる原因と抜け出す手順
ベンチプレスだけ、周りに置いていかれている気がする。ジムで隣の人がひょいと挙げている重さが、自分には1回も持ち上がらない。SNSでは体重の1.5倍を挙げる人が並…

目的別にどの型を選ぶか

足上げベンチプレスの3つの型は、目的によって向き不向きがあります。自分の目的に近いものを選んでください。

🎯 目的別おすすめ
目的・シーン おすすめの選択 頻度の目安
足上げを初めて試す ラーセンプレス(踵を少し浮かせる) 胸の日の補助で週1回
胸のストレッチを強めたい 膝90度の一般的な足上げ 週1回・2〜3セット
ベンチの記録を伸ばしたい 比率を測って弱点側を強化 数か月に1度比率を確認
体のぐらつきを直したい パラフォーム(足を真っ直ぐ伸ばす) 軽めの重量で週1回
ベンチを始めて間もない 足上げはせず通常フォームを固める —

筋肥大が目的の人は、可動域の広さを活かせる一般的な足上げがなじみやすいでしょう。記録向上が目的の人は、型より「比率を測り、弱い側に練習を寄せる」使い方が向いています。

ただし、どの型も通常ベンチの代わりにはなりません。型を選ぶ前に、通常フォームで肩甲骨の固定とバーの軌道が安定していることが前提です。

大会では使える?自宅ベンチでもできる?よくある疑問に回答

パワーリフティングの大会では反則になる

足上げベンチプレスは、パワーリフティングやベンチプレスの公式大会では使えません。日本パワーリフティング協会のルールブックでは、「両足の靴底全面は床面または足台に水平につけていること」と定められ、試技中はこの姿勢を保たなければなりません。

さらに、リフターの足がベンチ台やベンチ台の支柱に触れることも反則行為に挙げられています。試技開始前のセッティング時に足をベンチ台に載せることも禁止されています。つまり、足を浮かせる・ベンチに載せるといったフォームは、大会では成立しません。

大会を目指す人にとって、足上げはあくまで練習用の補助種目です。本番では足をしっかり床につけて踏ん張る技術が必要になるため、足上げの比重を増やしすぎないよう注意してください。

なお、同協会は2026年1月16日開催の全日本ベンチプレス選手権大会からルール改正を適用しています。大会に出る予定がある人は、最新のルールブックを公式サイトで確認しておきましょう。

自宅のベンチでやるときの注意点

自宅のトレーニングベンチでも足上げベンチプレスはできますが、ジムより気をつける点が増えます。

まず、ベンチの幅と安定性です。日本パワーリフティング協会のルールではベンチ台の幅を29cm〜32cmと定めていますが、家庭用ベンチには幅が狭いものや、片側に体重が寄ると揺れやすいものもあります。足を浮かせると体を支えるのはお尻と肩甲骨だけなので、ベンチの揺れがそのままバーのブレにつながります。

次に、安全装置です。自宅でバーベルを使うなら、セーフティバーつきのラックは必須と考えてください。足上げはバランスを崩しやすく、潰れたときに足で踏ん張って脱出することもできません。

セーフティのない環境なら、バーベルではなくダンベルで足上げを行う方が安全です。ダンベルなら潰れても左右に下ろせるため、逃げ道を確保できます。

家庭用ベンチの選び方は、こちらの記事で比較しています。

あわせて読みたい
トレーニングベンチのおすすめは耐荷重で選ばない|家庭用6モデルを角度と価格で比較
ダンベルは買った。プロテインも用意した。それでも自宅の胸トレが伸びない——その原因の多くは、ベンチがないことです。床に寝たままダンベルプレスをすると、肘が床に当…

ダンベルやスミスマシンでも代用できるか

足上げのやり方は、バーベル以外の器具にも応用できます。それぞれ特徴が違うので、目的に合わせて使い分けましょう。

ダンベルで行う足上げダンベルプレスは、左右の手が独立して動くぶん、体幹で体を安定させる要素がさらに強くなります。重量はバーベルより軽くなりますが、潰れたときに安全に下ろしやすいのが利点です。自宅トレ中心の人には取り入れやすい方法です。

スミスマシンはバーの軌道がレールで固定されているため、足上げでも左右のブレを気にせず押せます。一方で、軌道が固定されることで体幹の安定に頼る要素は小さくなり、足上げならではの体幹への刺激は薄れます。

どの器具でも、肩甲骨を寄せてからお尻をつけ、最後に足を上げる順番は変わりません。器具が変わっても、可動域が広がることによる肩への負担は同じなので、重量は控えめから始めてください。

Q 足上げベンチプレスは毎回の胸トレに入れた方がいい?
A 毎回入れる必要はありません。肩への負担が通常ベンチより大きいため、胸の日の補助種目として週1回程度から始め、通常ベンチの練習量を確保する方が全体の伸びにつながります。
Q 足を上げると呼吸がしにくいのですが?
A 体幹を固めようとして息を止めがちになるためです。e-ヘルスネットでも、血圧の急な上昇を抑えるため息をこらえないよう注意を促しています。下ろすときに吸い、押すときに吐くリズムを意識してください。

まとめ

💪 この記事の結論

足上げベンチプレスは脚の力を消し、上半身の押す力を確かめる補助種目です。通常ベンチの90%を上限に軽めから試しましょう。

✅ 要点チェック
  • ✔ 重量は9割が目安:比率で弱点側を判断する
  • ✔ 型は3種類:入門は踵だけ浮かせるラーセン
  • ✔ 順番が命:肩甲骨→お尻→最後に足を上げる
  • ✔ 肩と腰に注意:可動域が広がり負担も増える
  • ✔ 補助種目に置く:通常ベンチをメインに残す

まずは次の胸の日、通常ベンチを終えたあとに、1RMの60%程度でラーセンプレスを1セットだけ試してみてください。足をつけたときとの違いを体で確かめることが、自分に合う使い方を見つける最初の一歩になります。

※研究データやルールは記事作成時点のものです。最新情報は公式サイトでご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

筋トレの教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

コメント

コメントする

目次