「普通の腕立て伏せが1回もできない」「膝をついた腕立てって、ラクをしているだけで意味がないのでは?」――自宅で筋トレを始めた人から、ジムでもいちばんよく聞かれる悩みのひとつです。床に胸を近づけた瞬間に腕がプルプル震えて、そのまま潰れてしまう。そんな経験があると、腕立て伏せそのものを諦めたくなりますよね。
先に結論をお伝えすると、膝つきプッシュアップは「劣化版の腕立て」ではありません。研究では体重のおよそ49%を腕で押し上げる種目と測定されていて、通常の腕立て伏せ(64%)より軽いぶん、胸の近くまで深く下ろすフォームを最後まで守れます。浅い通常版を10回やるより、深い膝つきを10回やるほうが、大胸筋・上腕三頭筋にしっかり負荷を届けやすいのです。
この記事では、負荷が何%軽くなるのかという数字、頭から膝までを一直線に保つ手順、効かない・膝が痛いときの失敗パターン、回数とセットの組み方、通常の腕立て伏せへ移るタイミングまで、順番に整理しました。読み終えるころには、今日から何回・何セットやればいいかがはっきりしているはずです。
・膝つきプッシュアップが体重の何%を押す種目なのか(研究データで比較)
・頭から膝まで一直線を作る正しい手順と、効かせるための深さ
・効かない・膝が痛い・腰が落ちるといった失敗の原因と対策
・回数とセット数の目安、通常の腕立て伏せへ移るタイミング
膝つきプッシュアップは「ラクな腕立て」ではない|まず知っておきたい3つの事実

膝をついているぶん「手抜き」に見られがちですが、中身を見ると立派な筋力トレーニングです。最初に、この種目の正体を3つの事実から押さえておきましょう。
鍛えられるのは通常の腕立て伏せと同じ大胸筋・上腕三頭筋・三角筋
膝つきプッシュアップで主に働くのは、胸の大胸筋、二の腕の裏側にある上腕三頭筋、肩の前側の三角筋です。つまり、通常の腕立て伏せとまったく同じ筋肉を使います。違うのは「支点」が足先から膝に移ることだけです。
理由はシンプルで、腕を曲げ伸ばしして体を押し上げる動き自体は変わらないからです。肘を曲げるときに大胸筋が引き伸ばされ、押し上げるときに大胸筋と上腕三頭筋が縮み、三角筋の前部がそれを補助します。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、腕立て伏せはスクワットやダンベル体操と並ぶレジスタンス運動(筋トレ)の代表例として紹介されています。
たとえば、ベンチもダンベルもない自宅で胸を鍛えたい人にとって、道具ゼロで大胸筋に負荷をかけられる種目は貴重です。ダンベルプレスのように重さを選ぶ必要もありません。
ただし注意点もあります。膝をつくと体幹で姿勢を支える負担も小さくなるため、腹筋まわりへの刺激は通常版より控えめです。お腹まで鍛えたいなら、プランクなど体幹種目を別に足すのが現実的です。
研究では体重の約49%を押す種目と測定されている
膝つきプッシュアップの負荷は「体重のおよそ半分」と覚えておくとわかりやすいです。米国の研究チームが2011年に発表したEbbenらの研究(Journal of Strength and Conditioning Research)では、膝つきは体重の49%、通常の腕立て伏せは64%の床反力が測定されました。
根拠となったのは、日常的に運動する23名(男性14名・女性9名)が6種類の腕立て伏せを行い、手の下に置いたフォースプレートで押す力を計測したデータです。性差は見られなかったと報告されています。
体重60kgの人に当てはめると、膝つきで約29kg、通常版で約38kgを腕で押している計算になります。差は約9kg。この上乗せを一気に背負うと考えると、通常の腕立て伏せがいきなりきつく感じる理由が見えてきます。
注意したいのは、これはあくまで研究の平均値だという点です。手をつく位置や膝の位置、体格によって数値は前後します。「自分はぴったり49%」と考えず、通常版より一段軽い負荷と理解しておきましょう。
膝をつくと「てこ」が短くなるから軽くなる
膝つきで負荷が下がる仕組みは、てこの長さで説明できます。通常の腕立て伏せは足先を支点にした長い板のような姿勢ですが、膝をつくと支点が手に近づき、板が短くなります。
NSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)の機関誌に載ったContrerasらのレビューでも、膝つきは「てこを短くして体重の負荷を下げ、主動筋と体幹の要求を大きく下げる」と整理されています。同じレビューでは、上半身の筋力が限られる人には壁腕立てや膝つきが適切だとされています。
この仕組みがわかると、応用も効きます。膝を手から遠い位置に置けば体が長くなって少し重くなり、近づけるほど軽くなる。つまり膝の位置そのものが「重さのダイヤル」になるのです。
ただし、膝を手に近づけすぎると、お尻が突き出た「四つん這いで肘を曲げるだけ」の動きになり、胸に負荷が乗りにくくなります。太ももと胴体が一直線に近い角度を保てる範囲で調整してください。
床反力=体が床を押したときに床から押し返される力。腕立て伏せでは「手でどれだけの重さを支えているか」の目安になります。
体重比=その力が体重の何%にあたるかを示した値。体重が違う人同士でも負荷を比べやすくなります。
通常の腕立て伏せと比べて、負荷はどれくらい軽い?
「膝つき=軽い」はわかっても、どのくらい軽いのか、ほかの楽な腕立てと比べてどの位置にいるのかは意外と知られていません。数字で並べてみると、自分に合う段階が選びやすくなります。
6種類の腕立て伏せを体重比で並べると膝つきは下から2番目
Ebbenらの研究では、腕立て伏せ6種類の負荷を体重比で比べています。並べると、膝つきは軽いほうから2番目の位置にあたります。
| 種類 | 体重比 | 体重60kgの場合 |
|---|---|---|
| 台61cmに手をつく | 41% | 約25kg |
| 膝つきプッシュアップ | 49% | 約29kg |
| 台30cmに手をつく | 55% | 約33kg |
| 通常の腕立て伏せ | 64% | 約38kg |
| 台30cmに足を乗せる | 70% | ー |
| 台61cmに足を乗せる | 74% | ー |
出典:Ebben WP et al. J Strength Cond Res. 2011 の体重比を、体重60kgに当てはめた概算
この表から読み取れるのは、膝つきと通常版のあいだに「台30cmに手をつく腕立て」という中間の段階があることです。椅子や低めのソファの座面に手をつけば再現できます。
ただし、表の数値は動作中のピークの力を測ったものです。ゆっくり動くか素早く動くかでも変わるので、段階の目安として使ってください。
実は「下の姿勢」ほど重い。だから深く下ろす価値がある
意外と知られていないのですが、腕立て伏せは胸を床に近づけた「下の姿勢」のほうが、腕を伸ばした「上の姿勢」より重くなります。
Suprakらの研究では、膝つきで支える重さは上の姿勢で体重の54%、下の姿勢で62%。通常の腕立て伏せでは上が69%、下が75%でした。さらに、上下での変化の割合は膝つきのほうが大きいと報告されています。
これが何を意味するかというと、膝つきプッシュアップで浅くしか下ろさない人は、いちばん負荷が乗る区間を丸ごと捨てているということです。膝つきでも、胸が床に近づく最後の数センチこそが本番。ここを省くと「回数はこなせるのに胸に効かない」状態になります。
なお、この研究の被験者は筋トレ経験の多い男性28名です。研究者自身も「初心者やリハビリ中の人は、筋力差に合わせて可動域を調整する必要があるかもしれない」と述べているので、深く下ろせない日は無理をせず、下ろせる深さから少しずつ広げていきましょう。
壁腕立て・台腕立てとの違いは「床に近い感覚」で練習できること
膝つき以外にも、壁に手をつく腕立てや、台に手をつく腕立てという軽い選択肢があります。そのなかで膝つきを選ぶメリットは、通常の腕立て伏せと同じ「床に手をつく感覚」で練習できることです。
手の位置、肩甲骨の動き、胸を床に近づける軌道は、通常版とほぼ共通です。台腕立ては体が斜めになるぶん、押す方向が通常版と少し変わります。膝つきで覚えたフォームは、そのまま通常版に持ち込みやすいのです。
一方で、台腕立ては台の高さで負荷を細かく変えられ、膝に体重がかからないという利点があります。膝に不安がある人や、膝つきでも1回もできない人は、まず台腕立てから入るほうが安全です。
デメリットとしては、膝つきは膝の皿の下あたりに体重がかかるので、硬い床だと痛みが出やすいことです。このあとで紹介するように、マットやクッションを敷くのが前提になります。
膝つきプッシュアップの正しいやり方は「頭から膝まで一直線」で決まる

ここからはフォームの手順です。ポイントは、膝から頭までを1枚の板のように固め、その板ごと床に近づけること。3つのパートに分けて説明します。
スタート姿勢は手幅を肩幅よりやや広く、膝の下にマットを敷く
スタート姿勢の作り方は次の通りです。
- 床にヨガマットやクッションを敷き、その上で四つん這いになる
- 両手を肩幅よりやや広めに開き、指先を前に向けて床につく
- 膝を少し後ろへずらし、足先を床から浮かせる(すねは上げても、軽く床につけてもよい)
- お腹に軽く力を入れ、頭・背中・お尻・膝が一直線になる位置で止める
手幅を肩幅よりやや広めにするのは、トレーナー監修のmelosの解説やQITANOの解説でも共通している基本です。この幅だと肘が自然に斜め後ろへ曲がり、大胸筋と上腕三頭筋の両方に負荷が分散します。
膝を手の真下に置く四つん這いのままだと、お尻が高すぎて腕だけの運動になります。膝をずらして、太ももと胴体が一直線に近い角度にするのがコツです。
注意点は、膝の皿で床に乗らないこと。膝のお皿の少し上、太もも寄りの位置に体重を乗せると痛みが出にくくなります。マットが薄い場合は、たたんだバスタオルを重ねても構いません。
胸もしくは顎が床に付くくらいまで下ろし、一瞬止める
動作は「深く下ろして、一瞬止めて、押し返す」の3拍子です。
- 息を吸いながら、肘を曲げて体全体をゆっくり床へ近づける
- 胸もしくは顎が床に付くくらいまで下ろしたら、一瞬止める
- 息を吐きながら、手で床を押して体を持ち上げる
- 腕が伸びたら、また1にもどる
深く下ろすべき理由は、前の章で紹介した通り、下の姿勢ほど負荷が大きいからです。一瞬止めるのは、反動で跳ね返るのを防ぎ、筋肉で押し返す区間を確保するためです。
e-ヘルスネットのスロートレーニングの解説では、腕立て伏せを3〜5秒程度かけて上げて、3〜5秒かけて下げる方法が紹介されています。腕を伸ばしきらずに繰り返すノンロックと組み合わせると、軽い負荷でも筋肉の緊張が途切れません。膝つきで回数が楽にこなせるようになった人は、このテンポに変えるだけで一段きつくできます。
注意したいのは呼吸です。きつくなると息を止めがちですが、厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023の情報シートでも、息をこらえず血圧の急上昇を抑えることが注意点に挙げられています。
肘は真横に張らず、斜め後ろへ曲げる
肘の向きは、真横に張らず、体に対して斜め後ろへ曲げるのが基本です。上から見て、体と腕が「矢印」の形になるイメージです。
肘を真横に張ると、上から見て「T字」の形になり、肩の前側に負担が集中しやすくなります。反対に肘を体にぴったりつけると、上腕三頭筋の比率が増えて、胸への負荷が減ります。肩幅よりやや広い手幅で斜め後ろへ曲げると、胸と腕にバランスよく負荷がかかります。
肩甲骨の動きも意識してみてください。下ろすときは肩甲骨を背中の中央へ寄せ、押し上げるときは左右に開くように床を押し込みます。これで胸の筋肉が伸び縮みする幅が広がります。
ただし、肩甲骨を寄せることに集中しすぎて首がすくむと、肩に余計な力が入ります。肩は耳から遠ざけるように下げたまま動かしましょう。肩に痛みが出る場合は動作を中止し、続くようなら専門医に相談してください。
・膝の下にヨガマット・クッション・たたんだバスタオルを敷いたか
・手首に違和感がないか(痛む場合は台腕立てなど別の段階に切り替える)
・頭から膝まで一直線の姿勢を、横から鏡やスマホで確認できる環境か
・食後すぐや体調がすぐれない日ではないか
効かない・膝が痛い・腰が落ちるときに見直したい失敗パターン
膝つきプッシュアップは簡単そうに見えるぶん、自己流のクセがつきやすい種目です。ここでは現場でよく見る失敗を、原因と対策のセットで紹介します。
失敗例1:浅い上下運動で「回数だけこなす」状態になっている
いちばん多いのが、胸を床に近づけないまま浅い屈伸を繰り返してしまうパターンです。「20回できるのに胸が全然張らない」という人は、たいていここに当てはまります。
原因は、きつくなってきたときに肘の曲げが少なくなり、床から離れた位置ですぐ体を起こしてしまうことです。QITANOの解説でも、この「床への接近不足」が効果を下げる間違いとして挙げられています。先ほどの研究の通り、負荷がいちばん乗るのは下の姿勢なので、浅い屈伸では重い区間を丸ごとカットしていることになります。
対策は、床に目印を置くことです。胸の下に丸めたタオルや薄いクッションを置き、「タオルに胸が触れたら1回」と決めると、深さが毎回そろいます。それで回数が半分に減っても問題ありません。浅い20回より深い10回のほうが、胸に届く負荷は大きいからです。
注意点として、深さを優先した結果、最後の数回で姿勢が崩れるようなら、そこでセットを終えましょう。フォームが崩れた状態の回数は数えないくらいの気持ちで十分です。
失敗例2:お尻が先に上がり、くの字で押している
次に多いのが、押し上げるときにお尻が先に上がって、体が「くの字」になるパターンです。
原因は、腕と胸の力が足りなくなったときに、腰を先に上げて楽をしようとする体の反応です。QITANOでも「疲れてくると、起き上がる時に腰から先に上げる態勢になることが多い」と指摘されています。くの字になると胸の位置が高くなり、大胸筋の伸び縮みが小さくなります。
対策は、動作の前にお腹とお尻に軽く力を入れて固めることです。おへそを背骨に近づけるイメージを持つと、体が1枚の板のまま動かせます。横から動画を撮って、頭・背中・お尻・膝のラインがまっすぐかを確認するのが確実です。
反対に、腰が反って床に落ちる人もいます。これも腹筋の力が抜けているサインです。どちらの場合も、姿勢を保てる回数でセットを区切り、無理に回数を追わないことが大切です。
失敗例3:膝のお皿で体重を受けて痛くなる
3つめは、膝そのものが痛くなって続かないパターンです。腕や胸より先に膝が限界を迎えるのは、もったいない終わり方です。
原因は、硬いフローリングの上で、膝のお皿に体重を直接乗せていることです。膝つきプッシュアップは体重のおよそ半分を手で、残りを膝で受けるので、膝にもそれなりの重さがかかります。
対策は、床にヨガマットやクッションを敷くことです。melos・QITANOどちらの解説でも、膝が痛くならないようにマットやクッションを敷くことがすすめられています。そのうえで、お皿の少し上、太もも側で床に触れるよう膝の位置を微調整してください。
マットを敷いても痛みが残る場合や、膝に持病がある場合は、膝をつかない台腕立て(椅子やソファの座面に手をつく)に切り替えるのが安全です。痛みが続くときは専門医に相談しましょう。
何回・何セット・週何日やればいい? 今日から使える組み方
フォームが決まったら、次は量の決め方です。回数・セット・頻度の3つを、公的な目安とトレーナー監修の解説をもとに組み立てます。
最初は10回×2〜3セットを基準にする
始めたばかりの人は、10回×2〜3セットを基準にするとわかりやすいです。melosやJOYFITの解説では10回×3セット、ほかの解説でも10回×2〜3セットが目安として紹介されています。
10回を基準にする理由は、フォームを崩さずに最後まで集中できる回数だからです。15回、20回と増やすと、後半で浅くなったりお尻が上がったりしやすくなります。前の章の失敗パターンを防ぐためにも、最初は「きれいな10回」を積み重ねることを優先しましょう。
もし10回が1セットしかできないなら、5回×4セットのように分けても構いません。合計の回数を少しずつ増やすことが大切です。QITANOでは、継続して合計で30回くらいできるようになることを目標にすると紹介されています。
注意点として、セット間の休憩を短くしすぎると、2セット目以降に回数がガクッと落ちます。呼吸が落ち着き、次のセットも同じ深さで下ろせると感じるまで休んでから再開してください。
頻度は週2〜3日。毎日やるより休みを挟む
頻度は週2〜3日が基準です。厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023では、成人および高齢者に筋トレを週2〜3日実施することが推奨されています。同じ情報シートでは、筋トレを実施している群は実施していない群に比べて、総死亡リスクや心血管疾患などの発症リスクが10〜17%低いという報告も紹介されています。
毎日やりたくなる気持ちはわかりますが、筋肉に負荷をかけるのと同じくらい、休息日を確保することが大切だと同ガイドでも示されています。月・木、または月・水・金のように1日以上あけるのが組みやすいパターンです。
自宅での強度については、同ガイドに「無理せずに『できなくなるところまで行う』が最も簡単な目安」という記載があります。膝つきなら、正しい深さで下ろせなくなったところが「できなくなるところ」と考えるとよいでしょう。
ただし、胸や腕に強い張りが残っている日は、無理に同じ種目をやらず、スクワットなど下半身の種目に回すのもひとつの方法です。全身の組み方は、メニュー表の作り方を解説した記事も参考にしてください。

ノートに「筋トレメニュー表」と書いたはいいものの、種目名を3つ並べたところで手が止まる——ジムでも自宅でも、これは本当によくある詰まり方です。何をやるかより先に…
回数が楽になったら「テンポ」と「膝の位置」で負荷を足す
10回×3セットが楽にこなせるようになったら、負荷を少し足すタイミングです。通常の腕立て伏せに進む前に、膝つきのまま負荷を上げる方法が2つあります。
ひとつめは、動作のテンポを遅くすることです。e-ヘルスネットで紹介されているスロートレーニングのように、3〜5秒かけて下げて、3〜5秒かけて上げる。さらに腕を伸ばしきらないノンロックで続けると、同じ10回でも負荷がぐっと増えます。e-ヘルスネットでは、腱や関節への負担が小さいという利点も挙げられています。
ふたつめは、膝の位置を手から少し遠ざけることです。てこが長くなるぶん、通常版に近い負荷に少しずつ寄せられます。膝の位置を床のテープなどで目印にしておくと、毎回の負荷がそろいます。
注意点として、テンポも膝の位置も同時に変えると、どちらが効いたのかわからなくなります。1〜2週間ごとにどちらか1つずつ変えていくと、自分に合ったペースが見えてきます。
| こんな人 | おすすめの始め方 | 回数・頻度の目安 |
|---|---|---|
| 通常の腕立てが1回もできない | 膝つきで深さ優先。できなければ台腕立てから | 5回×4セットなど分割、週2〜3日 |
| 二の腕を引き締めたい | 手幅を少し狭め、肘を体に沿わせる | 10回×2〜3セット、週2〜3日 |
| 胸を厚くしたい | 手幅を広めにし、胸を床すれすれまで下ろす | 10回×3セット、慣れたらスロー |
| 膝に不安がある | 厚めのマットを使う、または台腕立てに置き換え | 痛みが出ない範囲で週2〜3日 |
通常の腕立て伏せへ移るタイミングと、その間にはさむ段階
膝つきプッシュアップは、ゴールではなく通過点として使うと伸びが早くなります。とはいえ、移るタイミングを間違えると、通常版で浅い腕立てを繰り返す元の悩みに戻ってしまいます。
移行の目安は「深い10回×3セットがフォームを崩さずできる」
通常の腕立て伏せに移る目安は、胸を床近くまで下ろす膝つきを10回×3セット、最後までフォームを崩さずにこなせることです。QITANOが目標に挙げている「合計30回」とも一致します。
この基準にする理由は、膝つき(体重の49%)から通常版(64%)に移ると、Ebbenらの研究で体重比が一段大きく増えるからです。体重60kgなら約29kgから約38kgへ、いきなり約9kgの上乗せになります。膝つきの段階で余裕がないと、通常版では数回しかできず、フォームも崩れがちです。
移行した最初の日は、通常版を「できる回数だけ」行い、残りのセットを膝つきで補う方法がおすすめです。たとえば通常版3回+膝つき7回で1セット10回にすると、量を落とさずに通常版に慣れていけます。
注意したいのは、焦って移行して深さを妥協してしまうことです。通常版で胸が床から遠い腕立てを繰り返すより、膝つきで深く10回やるほうが胸への負荷は大きい、という前提を忘れないでください。
中間の段階として「台30cmの腕立て」をはさむ
膝つきと通常版の差が大きくて移れない場合は、間に台腕立てをはさみます。Ebbenらの研究では、高さ30cmほどの台に手をつく腕立てが体重の55%で、膝つき(49%)と通常版(64%)のちょうど間に位置しています。
台の高さは、自宅にあるもので代用できます。ローテーブル、ソファの座面、階段の2〜3段目などに手をつき、足は床で体を一直線にします。台が高いほど軽く、低いほど通常版に近くなります。
台腕立てのよいところは、膝をつかないので体幹で姿勢を支える練習もできることです。膝つきでは控えめだった腹筋まわりの働きを、通常版の前に慣らしておけます。
注意点は、台が動かないことを必ず確認することです。キャスター付きの家具や、押すとすべる椅子は使わないでください。台が動くと手をついた瞬間に体勢が崩れ、顔や胸を打つおそれがあります。
失敗例:移行後に回数が激減して、やる気が続かなくなる
移行期にありがちなのが、通常版に切り替えた途端に1〜2回しかできず、そのままトレーニング自体をやめてしまうパターンです。
原因は、膝つきと通常版を「どちらか一方」と考えてしまうことです。前の段階をきっぱり卒業しなければいけないと思い込むと、できない自分にがっかりして続かなくなります。
対策は、通常版と膝つきを同じセットの中で混ぜることです。先ほど紹介したように、通常版でできる回数をやったら、そのまま膝をついて残りの回数を続けます。これを2〜3週間続けると、通常版の割合が少しずつ増えていきます。記録をノートやスマホのメモに残しておくと、伸びが目に見えてやる気を保ちやすくなります。
注意点として、混ぜるときも深さの基準は変えないことです。膝をついた瞬間に急に深く下ろす、通常版のときだけ浅くなる、という差が出ないよう、同じ目印(胸の下のタオル)を使いましょう。
①膝つきで深い10回×3セット → ②スローテンポ・膝の位置で負荷を足す → ③台30cmほどの台腕立て → ④通常版+膝つきの混合セット → ⑤通常の腕立て伏せ10回×3セット。どの段階でも「胸を床近くまで下ろす深さ」は変えないのがポイントです。
胸・二の腕・肩、狙う場所で変える膝つきの応用3パターン
膝つきの基本ができたら、手幅や手の形を変えるだけで、狙う筋肉に強弱をつけられます。ここでは自宅でそのまま試せる3つの応用を紹介します。
胸を広く使うなら手幅を広げた「膝つきワイド」
大胸筋をより強く使いたいなら、手幅を広げた膝つきワイドプッシュアップが向いています。Contrerasらのレビューでは、肩幅の150%程度の広い手幅は大胸筋の活動を高めやすいと整理されています。
理由は、手幅を広げると肘が外へ開き、大胸筋が横方向に大きく引き伸ばされるからです。胸の外側まで張る感覚がつかみやすく、「胸に効いている感じがしない」という人にも試しやすいバリエーションです。
やり方は基本形と同じで、手の位置だけを肩幅の1.5倍程度まで広げます。下ろす深さは基本形より浅くなりやすいので、胸の下のタオルなどで深さをそろえてください。
注意点は、手幅を広げすぎると肩の前側に負担が集中することです。肩に違和感がある場合は、手幅を少し戻しましょう。肘の向きや手幅の決め方は、ワイドプッシュアップを詳しく解説した記事でまとめています。

腕立て伏せを胸に効かせたくて、手をできるだけ広く開いている。けれど胸より先に肩の前側が痛くなる、あるいは何回やっても胸が張った感じがしない——ワイドプッシュアッ…
二の腕の裏を狙うなら手幅を狭めた「膝つきナロー」
二の腕の裏側、上腕三頭筋を重点的に使いたいなら、手幅を狭めた膝つきナロープッシュアップです。レビューでも、肩幅の50%程度の狭い手幅は上腕三頭筋の活動を高めやすいとされています。
手幅を狭めると肘が体の近くを通るため、胸より腕を伸ばす力の比重が大きくなります。通常のナロープッシュアップは初心者には負荷が高めですが、膝をつけば手の届きやすい強度に下げられます。
やり方は、両手を胸の下で近づけ、肘を体の横に沿わせるように後ろへ曲げます。親指と人差し指で菱形を作る「ダイヤモンド型」にすると、手首の負担を分散しやすくなります。
注意点として、ナローは基本形より回数が落ちやすいので、5〜8回程度からで構いません。肘が外に開くと狙いがぼやけるので、脇を締めたまま動かしましょう。肘の向きのコツは、ナロープッシュアップの記事で詳しく解説しています。

腕立て伏せの手幅を狭めてみたけれど、二の腕にはあまり来ず、なぜか手首だけが痛くなる。ナロープッシュアップに手を出した人がまず突き当たるのがこの壁です。手を近づけ…
回数より質を上げるなら「スロー+ノンロック」
手幅は変えずに負荷を上げたい人には、スロー+ノンロックの組み合わせが向いています。e-ヘルスネットでは、50%1RMの負荷で行ったスロートレーニングでも、80%1RMの負荷を通常の速度で行ったトレーニングと同等の筋肥大・筋力増強効果があったという報告が紹介されています。
膝つきプッシュアップは体重の約半分という比較的軽い負荷なので、この方法と相性がよい種目です。3〜5秒かけて下げ、3〜5秒かけて上げ、腕を伸ばしきる手前で次の動作に入ります。筋肉の緊張が途切れないため、10回でも十分にきつくなります。
この方法は、マンションなどで床に響く音が気になる人にも向いています。ゆっくり動くので、体が床に当たったり手をつき直したりする音が出にくくなります。
注意点として、ゆっくり動くと息を止めやすくなります。下ろしながら吸い、押し上げながら吐くリズムを守ってください。スローに慣れていないうちは回数が減るのが普通なので、5〜6回からで問題ありません。
まとめ
まずは今日、マットを敷いて胸の下にタオルを1枚置き、「タオルに胸が触れたら1回」で何回できるかを数えてみてください。その回数が、あなたのスタート地点です。
※研究データは平均値であり、体格やフォームで負荷は前後します。痛みがある場合は無理をせず、専門医にご相談ください。

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